Elder Edda[3](古エッダ[3][26][27])
Poetic Edda[3](詩のエッダ[3]、歌謡エッダ[27])
古エッダ
概要
- 「エッダ」の語義ははっきりせず、「オッディの書」としたり、「詩学」「尊崇さるべきものについての書」とする説など様々ある。発見者ブリュニヨールヴが、スノリの詩学入門書「エッダ(スノリのエッダ)」の引用原本であると誤解し、名付けた[1]
- 過去(あるいは超時的)の神々・英雄を客観的叙述で謳う古歌謡。ゲルマン神話と英雄伝説の一次資料として重要[10]
- ゲルマン神話、英雄伝説の根本資料となるほか、当時の処世訓を格言詩の形で含む[27]
- 多くの歌謡と同じように、節をつけて歌われた[1]
- ゲルマン民族の神話としては『エッダ』と『スノッリのエッダ』のほかにはほとんどまとまったものは残されていないため、北欧神話というのはゲルマン神話といいかえてもまちがいではない[25]
- 古エッダの写本のうち最も有名なもので、1662年デンマーク王に献じられたことからこう呼ばれる[3]
- 十七世紀、アイスランドのスカウルホルトで司祭ブリュニヨールヴ(1639-75)により発見された。後に(1662年[3])コペンハーゲンの王立図書館に治められた[1]
- 1971年にコペンハーゲン王立図書館からアイスランドに返却された[3]
- 二十九歌謡(うち二つは断片)が収録。羊皮紙45枚からなる。32枚目の後8枚(「シグルドリーヴァの歌」の末尾から「シグルズの歌 断片」の終わりにかけて)が失われているが、神話を知るための最も優れたテキストといえる[1]
作者
作者不明[25][30]。
古くから口承により伝えられていたものであり、特定の作者はいない[1]。
編者
不詳。複数の、時代を異にした編者であると考えられる。発見者ブリュニヨールヴは当初、十二世紀のアイスランドの学者セームンドが編纂したと誤解していたため、十九世紀までは「セームンダルエッダ」と呼ばれていたことがある[1]。
成立年代
800年~1100年にわたると考えられるが、諸説あり不明[1]。
1270年以前に作成されたもの。一つないしいくつかの原本の写しであると考えられる[1]。
九世紀から何世紀にもわたって口伝えでつたえられた[25]。
九世紀から十三世紀にかけての古歌謡の集大成[27]。
成立場所
神話詩は、ノルウェーもしくはアイスランドであると推定。英雄詩は、大陸から直接、あるいはデンマークを経て、スカンジナヴィアへ渡り、アイスランドにまで伝来したと考えられる[1]。
使用言語
内容により、神話詩、英雄詩、確言詩の三つに概ね分類される[1]。
神話詩
- 古代ゲルマンの神々についてのほとんど唯一の、まとまりのある資料[1]
- キリスト教の影響や、中世の大陸ヨーロッパ文学の要素もみられるものの、極力古い異教の伝承をそのまま残すように努力が払われていると考えられる[1]
- 北欧人の奔放で雄大な宇宙解釈、神々と巨人族のすさまじいばかりの戦いと滅び、個性あふれる神々の多彩な形姿などが描かれている[30]
英雄詩
- 古代ゲルマン全体に知られた英雄伝説を、異教的形態のまま保存している[1]
- 登場人物の中には、実在する人物をモデルにしたものもいる[1]
- ドイツの中世叙事詩や古代英詩とちがい、キリスト教や中世騎士道の影響をほとんどうけず、民族大移動期のゲルマン人の異教精神をよりよくほぞんしている[30]
- べーオーウルフやニーベルンゲンの歌などに比べると簡潔かつ素朴だが、ゲルマン詩の特色である頭韻や韻律、ケニングなどの技巧がこらされている[1]
確言詩
韻律
- ゲルマン古詩に共通の頭韻を特徴とする[1]
- 韻律は比較的自由[10]
- 三通りの韻律が用いられている[1]
- fornyrðislag(古譚律)
……韻律一覧にて詳しく見る - ljóðaháttr(歌謡律)
……韻律一覧にて詳しく見る - málaháttr(談話律)
……韻律一覧にて詳しく見る
ケニング
巫女の予言[1][3][23][26][30]
- Vǫlospá[3][13] 巫女の予言[3] [女][3] (vǫlva 巫女、杖(vǫlr)をもって歩く者 [女])[3](spá 予言 [女])[3]
- 古エッダ中の最重要詩篇で、天地創造から宇宙壊滅までが語られる[3]
- 巫女がオーディンの要請によって、世界の起源、神々の生活と運命、世界の終末と新しいよりよい世界の再来について語る[1]
- 古今を通じ北欧でのもっとも偉大な詩ともいわれる[30]
- 出典:王の写本、ハウク本、スノリのエッダ(引用)[1]
- 成立年代:1000年前後[1]、十世紀ごろ[23]
- 成立場所:アイスランド[1]
- 作者:不明。異教からキリスト教への過渡期に生きたアイスランドの僧侶の作か?[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
オーディンの箴言[1][30]、高き者の歌[15]、高き者の言葉[32]、ハヴァマール[15]、ハーヴァマール[3][32]
- Hávamál[3][13] ハーヴァマール[3][32] the words of the High One[3] [中][3] (Hávi オーディンの別名。高き者の意)(mál ことば、事柄、契約 [中])[3]
- 古エッダの中の箴言集で、古代ゲルマン民族の精神・風俗・習慣を記した詩集[3]
- オーディンが詩人ロッドファーヴニルに対して様々な忠告を行うというていで、生活の知恵や処世術、ルーンの秘密などを紹介する
- 格言詩[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十世紀[1]
- 成立場所:恐らく77節まではノルウェー、他は不明[1]
- 韻律:ljóðaháttr(歌謡律)[1]
ヴァフズルーズニルの歌[1]
- Vafðrúðnismál[3][13] (mál ことば、事柄、契約 [中])[3]
- 物識り巨人ヴァフズルーズニルとオーディンが知恵比べをするというていで、様々な世界の知識を紹介する
- 記憶詩[1]
- 出典:王の写本、アルナマグネアン写本、スノリのエッダ(引用)[1]
- 成立年代:十世紀前半か[1]
- 成立場所:ノルウェーかアイスランド[1]
- 韻律:ljóðaháttr(歌謡律)[1]
グリームニルの歌[1]
- Grímnismál[3][13] (Grímnir[1] 仮面をかぶる者[1] オーディンの別名)(mál ことば、事柄、契約 [中])[3]
- オーディンがゲイルロズ王の息子アグナルに対して祝福を与えるというていで、様々なものの名前や世界の知識を紹介する
- 記憶詩[1]
- 出典:王の写本、アルナマグネアン写本、スノリのエッダ(引用)[1]
- 成立年代:十世紀初頭[1]
- 成立場所:ノルウェーまたはアイスランド[1]
- 韻律:大部分はljóðaháttr(歌謡律)、一部fornyrðislag(古譚律)[1]
スキールニルの旅[1]
- For Scírnis[13]、Fǫr Scírnis[13] (fǫr 旅、航行 [女])[3]
- 太陽神フレイと大地の女神ゲルズの結婚を祝う豊穣儀礼の歌(M・オルセンの説)[1]
- 神話的テーマを扱いながら、詩人自身の感情を吐露した創作(J・デ・フリースの説)[1]
- 出典:王の写本、アルナマグネアン写本[1]
- 成立年代:900年頃[1]
- 成立場所:ノルウェー?[1]
- 韻律:ljóðaháttr(歌謡律)[1]
ハールバルズの歌[1]
- Hárbarðzlióð[13] (Hárbarðr[1][13](ハールバルズ[1]) 灰色の髭[1] オーディンの別名[1])(barð 草地 口の上の髭の同義語 [中])[3]
- 渡し守に化けたオーディンとトールが口論をするというていで、互いの様々な事績を紹介する
- 出典:王の写本、アルナマグネアン写本[1]
- 成立年代:十世紀後半[1]
- 成立場所:アイスランドよりはむしろノルウェー[1]
- 韻律:多くはmálaháttr(談話律)とljóðaháttr(歌謡律)、若干はfornyrðislag(古譚律)。韻を踏まないのも若干みられ、エッダの中でもっともルーズな形式を取る[1]
ヒュミルの歌[1][30]
- Hymisqviða[13]
- トールとチュールが巨人ヒュミルのところに大釜を取りに行く話[1]
- 出典:王の写本、アルナマグネアン写本[1]
- 成立年代:十一世紀後半以降。あるいは十二、三世紀(J・デ・フリースの説)[1]
- 成立場所:アイスランド?[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)。頭韻が代名詞におかれたり、切れ目が短行の中におかれたりするなどいい加減な部分もある[1]
- ケニング:エッダの中で最も多く見られる[1]
ロキの口論[1]
- Locasenna[13] (senna[9] 口論[2])
- エーギルのところでの神々の酒宴にロキが乗り込んで、次々と神々を罵り、スキャンダルを暴く話[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十世紀末(G・ヨーンソンの説)、1200年頃(デ・フリースの説)[1]
- 成立場所:アイスランド?[1]
- 韻律:完璧なljóðaháttr(歌謡律)の詩形をもち、技巧的にきわめて優れる[1]
スリュムの歌[1][30]
- Þrymsqviða[13]
- 槌を失ったトールが、ヘイムダルの入れ知恵で、自ら花嫁に化け、ロキを侍女に仕立てて巨人の国におもむき、槌を取り戻し、巨人族を打ちのめす話[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十一世紀前半[1]
- 成立場所:アイスランド[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)。脚韻を踏む箇所がみられる[1]
- ケニング:ほとんどない[1]
ヴェルンドの歌[1]、ヴェールンドの歌[26]
- Vǫlundarqviða[13]
- フィン王の息子ヴェルンドがニーズズ王に復讐をする
- 「白鳥乙女」と、古くから全てのゲルマン種族の間で愛好されている「鍛冶屋ヴェルンド」の二つの話が結びついている[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:九世紀[1]
- 成立場所:ノルウェー[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
アルヴィースの歌[1]
- Alvíssmál[13] (mál ことば、事柄、契約 [中])[3]
- トールとアルヴィースの知恵比べというていで、様々な種族における様々な物事の呼び名を紹介する
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十一世紀[1]
- 成立場所:アイスランド?[1]
- 韻律:ljóðaháttr(歌謡律)[1]
フンディング殺しのヘルギの歌Ⅰ[1]
- Helgaqviða Hundingsbana in fyrri[13] (bani 殺害者、死 [男])[3](fyrri 以前に、むしろ [副])[3]
- ヘルギの誕生から始まる、彼の英雄的武勲を称えた頌歌[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十一世紀中頃[1]
- 作者:アイスランドのスカルド詩人[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
- ケニング:同義語と共に多用される[1]
ヒョルヴァルズの子ヘルギの歌[1]
- Helgaqviða Hiǫrvarðzsonar[13] (sonar sonr(息子)の属格形)[3]
- ヒョルヴァルズ王の嫁えらび、女巨人と勇士との口論、主人公の恋と死、という、内的な統一のない三つの部分からなる歌。前の歌のヘルギとは直接関係はない[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:900年頃[1]
- 成立場所:ノルウェー[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)、一部ljóðaháttr(歌謡律)[1]
フンディング殺しのヘルギの歌Ⅱ[1]
- Helgaqviða Hundingsbana ǫnnor[13]
- ヘルギとシグルーンの愛とヘルギの死にさまざまな伝説を取り入れた歌[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:九世紀中頃(ヨーンソンの説)、十二世紀末(デ・フリースの説)[1]
- 成立場所:ノルウェー[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
シンフィエトリの死について[1]
グリーピルの予言[1]
- Grípisspá[13] (spá 予言 [女])[3]
- 予言の才のある従兄グリーピルが語るシグルズの生涯の概観[1]
- シグルズに関するいくつかの歌からピックアップして作り出した記憶詩[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十二世紀後半[1]
- 成立場所:アイスランド[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
レギンの歌[1][11]
- Reginsmál[13] (mál ことば、事柄、契約 [中])[3]
- シグルズ伝説にいくつかの話がついてできたもので、一連の若いシグルズの歌の冒頭をなす[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十世紀中頃[1]
- 成立場所:ノルウェー[1]
- 韻律:ljóðaháttr(歌謡律)とfornyrðislag(古譚律)[1]
ファーヴニルの歌[1]
- Fáfnismál[13] (mál ことば、事柄、契約 [中])[3]
- シグルズの龍退治が描かれる[1]
- この歌をモチーフにした絵がスウェーデンのセーデルマンランドの岩にルーネとともに描かれている[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十世紀[1]
- 成立場所:ノルウェーかアイスランド[1]
- 韻律:ljóðaháttr(歌謡律)とfornyrðislag(古譚律)[1]
シグルドリーヴァの歌[1]、シグルドリヴァの歌[15]
- Sigrdrífomál[13] (mál ことば、事柄、契約 [中])[3]
- オーディンにより魔法の眠りについたシグルドリーヴァをシグルズが目覚まし、彼女から種々の知恵を授かる[1]
- ルーネ文字と呪術の関係が語られており、ルーネ学にとってきわめて重要な資料である[1]
- 出典:王の写本、AM 738 4to、ヴェルスンガサガ[1]
- 成立年代:900年頃[1]
- 成立場所:ノルウェー[1]
- 韻律:ljóðaháttr(歌謡律)とfornyrðislag(古譚律)[1]
シグルズの歌 断片[1]
- Brot af Sigurðarqviðo[13] (brotna 砕ける、こわれる [自])[3](af ~から、~によって [前])[3]
- シグルズ殺害について描かれているが、この歌は写本に欠落があり、冒頭と末尾が失われている[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:九世紀初期[1]
- 成立場所:ノルウェー[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
グズルーンの歌Ⅰ[1]
- Guðrúnarqviða in fyrsta[13] (fyrstr 最初の [形])[3]
- シグルズが殺害された後のグズルーンの歎きの描写に終始しており、エッダ中で最も近代的な歌といえる[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十一世紀前半[1]
- 成立場所:アイスランド[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
シグルズの短い歌[1]
- Sigurðarqviða in scamma[13] (skammr 短い [形])[3]
- 内容から言えばブリュンヒルドの歌で、彼女の側に立ち、彼女の立場を理解して弁護する詩人によって書かれている[1]
- 言語表現上はかなり質の落ちる作品で、韻の踏み方や韻律、アクセント、切り目の位置などが不適切な部分が多く、叙述も不自然で繰り返しが多い[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十一世紀末(ヨーンソン)、十三世紀初(ゲンツマー)[1]
- 成立場所:アイスランド[1]
- 韻律:不規則なfornyrðislag(古譚律)[1]
ブリュンヒルドの冥府への旅[1]
- Helreið Brynhildar[13] (reið ríða(馬で行く。英語rideに相当)の過去三人称単数形)[3]
- ブリュンヒルドが冥府への途中で女巨人に会い、自分の生涯と運命を手短に語る[1]
- 出典:王の写本、Norna-Gests þáttr[1]
- 成立年代:十一世紀(ヨーンソン)、十二世紀初(ゲンツマー)[1]
- 成立場所:アイスランド[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
ニヴルング族の殺戮[1]
グズルーンの歌Ⅱ[1]
- Guðrúnarqviða ǫnnor[13] (ǫnnur 第2の、他の [代・数] 英語other、anotherに相当)[3]
- アトリの宮廷で、グズルーンが、スィオーズレク王に対して生涯の概観を独白する[1]
- 「シグルズの歌 断片」との一致が言語的詩形的に大きいため、その模倣とされている[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十世紀中頃(ヨーンソン)、十二世紀末(デ・フリース)[1]
- 成立場所:アイスランド(ヨーンソン)、ノルウェー(デ・フリース)[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
グズルーンの歌Ⅲ[1]
- Guðrúnarqviða in þriðia[13] (þriðja þriði(第3の)の女性・中性形)[3]
- スィオーズレクとの仲を疑われたグズルーンが、身の潔白を晴らすため中傷者ヘルキャとともに探湯をする[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十一世紀前半[1]
- 成立場所:アイスランド[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
オッドルーンの歎き[1]
- Oddrúnargrátr[13] (gráta 泣く)[3]
- 創作された人物であるオッドルーンと、グンナルとの恋愛模様を描く[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十一世紀前半[1]
- 成立場所:アイスランド[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
グリーンランドのアトリの歌[1][30]
- Atlaqviða in grœnlenzca[13] (Grœnland グリーンランド [中])[3]
- ブルグンド族とフン族の戦いを扱うが、ニーベルンゲンの歌やそれとかかわりをもつ後世の北欧詩とは異なり、シグルズはブルグンド族の滅亡と結びつかず、アトリはブルグンドの宝を手に入れるためにグンナルを招待し殺害する。またグズルーンも殺された夫シグルズのため兄弟に復讐する女ではなく、兄弟の復讐をアトリに対して遂げている[1]
- ニーベルンゲン伝説圏のもっとも古い素材を示す[30]
- 出典:王の写本[1]
- 作者:ハラルドの歌を作った詩人ソルビョルンか(ゲンツマー)[1]
- 成立年代:九世紀(ゲンツマー)[1]
- 成立場所:低地ドイツの底本をノルウェーで改作[1]
- 韻律:不規則。málaháttr(談話律)とfornyrðislag(古譚律)。混合したものもある[1]
グリーンランドのアトリの詩[1]
- Atlamál in grœnlenzco[13] (mál ことば、事柄、契約 [中])[3](Grœnland グリーンランド [中])[3]
- 前の『グリーンランドのアトリの歌』と同じ素材を扱ったものだが、成立はずっと後世のもので、言語表現の点でも前の歌よりおちる[1]
- エッダの英雄詩中で最も長い[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:1100年頃[1]
- 成立場所:グリーンランド(ヨーンソン)、オスロ近郊のグレンランドをグリーンランドと取り違えた(デ・フリース)[1]
- 韻律:málaháttr(談話律)[1]
グズルーンの扇動[1]
- Guðrúnarhvǫt[13]
- グズルーンが娘のスヴァンヒルドの復讐へと息子らを駆り立てる部分と、彼らの出発後、泣きながら中庭に坐って不幸な生涯を回想する部分との二つからなる[1]
- 出典:王の写本[1]
- 成立年代:十一世紀前半(ヨーンソン)、十二世紀前半(デ・フリース)[1]
- 成立場所:アイスランド[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
ハムジルの歌[1]
小エッダ
バルドルの夢[1][11]
- Baldrs draumar[13] (draumr 夢 [男] 英語dreamに相当)[3]
- オーディンが巫女を墓の中から起こし、バルドルの運命について訊く[1]
- 『デンマーク人の事績』にも、死者を目覚めさせて秘密を語らせるという、この歌に非常によく似た場面が描かれている[11]
- 出典:アルナマグネアン写本[1] ……十四世紀前半から由来するといわれる、アールニのコレクション。古エッダに比べると、含まれる歌謡の数もごく少なく、不完全[1]
- 成立年代:十世紀中頃、あるいは十二世紀[1]
- 成立場所:アイスランド[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
リーグの歌[1][30][32]
- Rígsþula[13]
- リーグという神が地上を旅して、奴隷、百姓、貴族の祖先をもうけた話[1]
- 出典:ヴォルム写本(Ormsbók)(AM 242 fol) (bók 本 [女])[3]
- 成立年代:十世紀中頃(ヨーンソンの説)、十二~三世紀(ゲンツマーの説)[1]
- 成立場所:ノルウェーかアイスランド[1]
- 韻律:大部分がfornyrðislag(古譚律)、一部málaháttr(談話律)とljóðaháttr(歌謡律)[1]
ヒュンドラの歌[1]
- Hyndlolióð[13]
- 女神フレイヤがひいきの勇士オッタルのために、輝かしい系図を語らせようと、女巨人をヴァルハラに連れて行く[1]
- 出典:フラート島本[1]
- 成立年代:十二世紀[1]
- 成立場所:アイスランド[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
グロッティの歌[1]
- Grottasǫngr[13] (söngr[9] 歌[2])
- デンマークの王家スキョルディンガル初代王フロージが、二人の女巨人を酷使して不思議な石臼グロッティをひかせるうち、二人の不満がつのり、やがてフロールヴ・クラキの復讐を予言する[1]
- 出典:王の写本、スノリのエッダ[1]
- 成立年代:十世紀後半[1]
- 成立場所:ノルウェー[1]
- 韻律:fornyrðislag(古譚律)[1]
フン戦争の歌 またはフレズの歌[1]
- Hunnenschlachtlied oder Hlǫðsqviða[13]
- 民族大移動期のフン族とゴート族の間の戦争が語られており、登場人物はおそらく史上実在したと思われる者ばかりとなっている[1]
- 出典:Hervarar saga ok Heiðreks[1]
- 成立年代:900年ごろ[1]
- 成立場所:ノルウェーまたはアイスランド[1]
- 韻律:規則正しいfornyrðislag(古譚律)[1]
ヒルデブランドの挽歌[1]
訳本・原文
訳本
- 谷口幸男(1973)『エッダ―古代北欧歌謡集』新潮社 :王の写本収録の古エッダ31篇の日本語完訳が記載。小エッダ、スノリのエッダの一部の日本語訳も記載
原文
- Gustav Neckel(1983)『Edda. Die Lieder des Codex regius nebst verwandten Denkmaelern 01. Text』Universitaetsverlag Winter; 5., verbesserte Auflage. :古エッダ全31篇の原文と、小エッダ6篇および、『スノリのエッダ』『ヴォルスンガサガ』の断片の原文が掲載