jǫtunn[3] 巨人[3] [男][3]
risi[3] 巨人[3] [男][3]
þurs[3] 巨人[3] ルーン文字Þの名称[3] [男][3]
原典版
概要
- 世界で最も古い種族(神族は巨人族から生まれたため、世界で存在するもののうち一番古いのは巨人族ということになる)[1]
- 必ずしも人の姿をしているわけではなく、マーナガルムやフレースヴェルグのように動物の姿をした巨人も多く存在する
- 巨人や小人やデモーンは太陽の光に堪えられず石に変るという北欧の俗信がある[1]
- 巨人は岩に住むと言われている[1]
- 巨人は未来のことに通じている[1]
- 稲妻は巨人や妖魔が投げつけて病気、不作をもたらす道具と考えられ、雷を呼び込む植物は巨人伝説と結びついた[27]
巫女の予言
オーディンの箴言
- 詩の蜜酒について語る場面で「霜の巨人」の記述が見られる[1]
ヴァフズルーズニルの歌
- ユミル(アウルゲルミル)を「霜の巨人」と呼ぶ箇所が見られる[1]
- エーリヴァーガルから毒液が湧いて、それが大きくなって巨人が生まれた(そのため、巨人族はいつも獰猛すぎるといわれる)[1]
グリームニルの歌
スキールニルの旅
ファーヴニルの歌
- 四十雀たちがレギンのことをhrímkalda jötun[13](冷たい巨人[1])と呼ぶ場面がみられる[1]
- レギンがファーヴニルのことをaldna iotun[13](老巨人[1])と呼ぶ場面がみられる[1] (aldr 年齢、時代 英語oldに相当 [男])[3]
ブリュンヒルドの冥府への旅
ヒュンドラの歌
- 全ての巨人はユミルから発している[1]
- 太古、地の果てで、九人の巨人の娘が武器をとって誉れの高い者を生んだ[1]
[1]ではこの三十五節のあとに続く三十七節で、
Hann Giálp um bar, Hann Greip um bar, …
と続くが、
- Hannは主格と対格で格変化を起こさないため、「彼は(主格)」あるいは「彼を(対格)」のどちらとも読むことができること
- ここで上げられる女巨人の名前がちょうど九人であり、三十五節でいわれる「九人の巨人の娘が(略)生んだ」に内容が合致すること
- 列挙されている女巨人の名前がいずれも格変化を起こしておらず、全て主格として書かれていると思われること
Hann Giálp um bar, Hann Greip um bar, …
とするのが適していると考えられる
グロッティの歌
ギュルヴィたぶらかし
- オーディンは、天地が作られる前には霜の巨人たちのところにいた[1]
- ユミルが寝ているときに汗をかき、左腕の下から男と女が生まれ、片方の足がもう片方の足と息子をこしらえた。そこから霜の巨人たちが由来している[1]
- ボルの息子たち(オーディン、ヴィリ、ヴェー)がユミルを殺害した際に傷口から流れ出たおびただしい血により、霜の巨人族は残らず溺れ死んだ。唯一生き残ったベルゲルミルとその妻から新しい霜の巨人族が由来している[1]
- 大地は円形で、外側は深い海が取り巻いているが、その海岸に巨人族の住む土地がある[1]
- ユグドラシルを支える三つの根のうちの一つは霜の巨人のところに伸びているが、そこは昔ギンヌンガガプがあった場所である。その根の下にはミーミルの泉があって、知恵と知識が隠されている[1]
- 霜の巨人や山の巨人ら(bergrisar[12])が通行できないように、ビフレストは火で燃えている[1]
([12]には「hrímþursar ok(霜の巨人や)」の記述なし。[14]には記述あり。) - 霜の巨人や山の巨人の多くは、トールの持つミョルニルという槌で、頭蓋骨を打ち砕かれた[1]
- ヘイムダルが山の巨人らから橋を守るためヒミンビョルグで見張りをしている[1]
- 霜の巨人や山の巨人らもバルドルの火葬に参加した[1]
ユングリンガサガ
フンディング殺しのヘルギの歌Ⅰ
詩語法
デンマーク人の事績
巨人の名
サガ
巨人を表すケニング
- フィヨルドの骨(岩)の男[2] [9]-10.(27)
- 岩の住人[1][2] [9]-10.(30)
- 岩の候[2] [9]-10.(41)
- 岩の王[2] [9]-41.(102)
- 岩のガウト[2] [9]-11.(55)
- 岩の熟知者[2] [9]-11.(55)
- 大地の脚(岩)の民[2] [9]-59.(148)
- 岩の神々[2] [9]-65.(201)
- Ála steinsins[9] 岩のアーリ[2]、浪の玉(岩)のアーリ[2] (steinn 石 [男])[3] [9]-45.(111)
- 岩屋の鯨[2] [9]-11.(49)
- フロージュン(ヨルズ)の黒き骨(断崖)のデンマーク人[2] [9]-69.(249)
- 山のメーレ[2] [9]-10.(30)
- 土の王[2] [9]-79.(322)
- 女巨人の末裔[2] [9]-11.(53)
- áttrunn apa[13] 猿の末裔[1]
- 老リトの男[2] [9]-51.(114)
- 川の金敷(岩)のエルディル[2] [9]-70.(251)
- 海の歯(岩礁)のシュル(女巨人)の民 [9]-66.(225)
女巨人を表すケニング
- 岩のヒルド[2] [9]-61.(180)
- brúðr ór stein[13] 岩の女[1] (brúðr 花嫁 [女] 英語brideに相当)[3](ór ~から [前])[3](steinn 石 [男])[3]
- 海の歯(岩礁)のシュル(フレイヤの別名) [9]-66.(225)
- auðsug jötuns[9] 巨人の富を吸い込む者[2] (auðr 富、金製の調度 [男])[3](súga 吸い込む)[3] [9]-67.(233)
- élsólar böl[9] 嵐と太陽の禍[2] (Sól 太陽)[3](bǫl böl 悪、害 [中])[3] [9]-67.(233)
- vílsinn völu[9] 巫女のみじめさ[2] (vǫlva 巫女、杖(vǫlr[3])をもって歩く者 [女])[3] [9]-67.(233)
- vörð nafjarðar[9] こしきの地の番人[2] (jǫrð 地、大地 [女] 英語Earth、独語Erdeに相当)[3] [9]-67.(233)
- hvélsvelg himins[9] 天の輪を呑みこむもの[2] (hverfa まわる、消える、方向が変わる)[3](himinn 天 [男] 英語Heaven、独語Himmelに相当)[3] [9]-67.(233)
- tungl sjöt-rungnis[9] 家のフルングニルの月[2] (tungl 月、星 [中])[3](sjöt sjǫt 席、座席 英語seatに相当) [9]-67.(233)
― 管理人注:[9]では「rungnir(ルングニル)」表記だが、[2]では「フルングニル」の記載。
巨人・巨人族に関連するケニング・別名
トールの別名
- ヴィーズギュムニル(=jötunn Vimrar vaðs[9] ヴィムルの浅瀬を渡る巨人)[2] (jǫtunn 巨人 [男])[3](vaða 歩く、浅瀬を渡る)[3]
- 巨人ゲイルロズの館へ行く際、ヴィムルという川を渡ったことに由来[2]
トールを表すケニング
- 巨人の試し手[2]
- dólgr jötna[9] 巨人の敵[2] (dólgr[9] 仇[2])(jǫtna 巨人の)[3]
- dólgr trollkvinna[9] 女巨人の敵[2] (troll トロル。ノルウェーの民話に現れる怪物:ユミルの死体から出たうじ) [中])[3](kvinna kona(女)の属格複数形)[3]
- bani jötna[9] 巨人の殺し手[2] (bani 殺害者、死 [男])[3]
- bani trollkvinna[9] 女巨人の殺し手[2]
- 岩のガウト(巨人)の怪力の殺し手[2]
- 巨人を窮地に陥れる者[2]
- gýgiar grœti[13] 女巨人泣かし[1] (gýgr 巨人の女 [女])[3]
ロキを表すケニング
ギュミルを表すケニング
- 海の巨人[18]
黄金を表すケニング
- munntal jötna[9][12] 巨人の口かぞえ[2] (munnr 口 [男] 英語mouthに相当)[3](tal 数)[3]
- mál jötna[9][12] 巨人たちのことば[2] (mál ことば、事柄、契約 [中])[3]
- orð jötna[9][12] 巨人たちの語[2] (orð ことば [中] 英語wardに相当)[3]
- tal jötna[9][12] 巨人たちの勘定[2]
- rödd jötna[9] 巨人の声[2] (rödd[9] 声、音声[2])
詩(詩の蜜酒)を表すケニング
- föðurgjöld jötna[9] 巨人の父のつぐない[2] (faðir 父)[3]
- 巨人ギリングのつぐない[2]
- jötna mjöð[9] 巨人の蜜酒[2]、巨人の酒[2] (mjǫðr 蜜酒(北欧神話の飲み物。ギリシア神話のnectarにあたる) [男])[3]
- 巨人の酵母の浪[2]
- 岩の住人(巨人)の胸の飲み物[2] [9]-10.(30)
- 山のメーレ(巨人)の海[2] [9]-10.(30)
船を表すケニング
斧を表すケニング
- trollkona hlífa[9] 楯の女巨人[2] (troll トロル。ノルウェーの民話にあらわれる怪物;ユミルの死体から出たうじ [中])[3](kona 女 [女] 英語queenに相当)[3]
牡牛を表すケニング
狼を表すケニング
天を表すケニング
岩を表すケニング
- 巨人の道[1]
石を表すケニング
- 巨人の館の輝く広間[18]
願いを表すケニング
- 岩のヒルド[2] [9]-61.(180)
- brúðr ór stein[13] 岩の女[1] (brúðr 花嫁 [女] 英語brideに相当)[3](ór ~から [前])[3](steinn 石 [男])[3]
- 海の歯(岩礁)のシュル(フレイヤの別名) [9]-66.(225)
- auðsug jötuns[9] 巨人の富を吸い込む者[2] (auðr 富、金製の調度 [男])[3](súga 吸い込む)[3] [9]-67.(233)
- élsólar böl[9] 嵐と太陽の禍[2] (Sól 太陽)[3](bǫl böl 悪、害 [中])[3] [9]-67.(233)
- vílsinn völu[9] 巫女のみじめさ[2] (vǫlva 巫女、杖(vǫlr[3])をもって歩く者 [女])[3] [9]-67.(233)
- vörð nafjarðar[9] こしきの地の番人[2] (jǫrð 地、大地 [女] 英語Earth、独語Erdeに相当)[3] [9]-67.(233)
- hvélsvelg himins[9] 天の輪を呑みこむもの[2] (hverfa まわる、消える、方向が変わる)[3](himinn 天 [男] 英語Heaven、独語Himmelに相当)[3] [9]-67.(233)
- tungl sjöt-rungnis[9] 家のフルングニルの月[2] (tungl 月、星 [中])[3](sjöt sjǫt 席、座席 英語seatに相当) [9]-67.(233)
― 管理人注:[9]では「rungnir(ルングニル)」表記だが、[2]では「フルングニル」の記載。
巨人・巨人族に関連するケニング・別名
- ヴィーズギュムニル(=jötunn Vimrar vaðs[9] ヴィムルの浅瀬を渡る巨人)[2] (jǫtunn 巨人 [男])[3](vaða 歩く、浅瀬を渡る)[3]
- 巨人ゲイルロズの館へ行く際、ヴィムルという川を渡ったことに由来[2] - 巨人の試し手[2]
- dólgr jötna[9] 巨人の敵[2] (dólgr[9] 仇[2])(jǫtna 巨人の)[3]
- dólgr trollkvinna[9] 女巨人の敵[2] (troll トロル。ノルウェーの民話に現れる怪物:ユミルの死体から出たうじ) [中])[3](kvinna kona(女)の属格複数形)[3]
- bani jötna[9] 巨人の殺し手[2] (bani 殺害者、死 [男])[3]
- bani trollkvinna[9] 女巨人の殺し手[2]
- 岩のガウト(巨人)の怪力の殺し手[2]
- 巨人を窮地に陥れる者[2]
- gýgiar grœti[13] 女巨人泣かし[1] (gýgr 巨人の女 [女])[3]
- 海の巨人[18]
- munntal jötna[9][12] 巨人の口かぞえ[2] (munnr 口 [男] 英語mouthに相当)[3](tal 数)[3]
- mál jötna[9][12] 巨人たちのことば[2] (mál ことば、事柄、契約 [中])[3]
- orð jötna[9][12] 巨人たちの語[2] (orð ことば [中] 英語wardに相当)[3]
- tal jötna[9][12] 巨人たちの勘定[2]
- rödd jötna[9] 巨人の声[2] (rödd[9] 声、音声[2])
- föðurgjöld jötna[9] 巨人の父のつぐない[2] (faðir 父)[3]
- 巨人ギリングのつぐない[2]
- jötna mjöð[9] 巨人の蜜酒[2]、巨人の酒[2] (mjǫðr 蜜酒(北欧神話の飲み物。ギリシア神話のnectarにあたる) [男])[3]
- 巨人の酵母の浪[2]
- 岩の住人(巨人)の胸の飲み物[2] [9]-10.(30)
- 山のメーレ(巨人)の海[2] [9]-10.(30)
- trollkona hlífa[9] 楯の女巨人[2] (troll トロル。ノルウェーの民話にあらわれる怪物;ユミルの死体から出たうじ [中])[3](kona 女 [女] 英語queenに相当)[3]
- 巨人の道[1]
- 巨人の館の輝く広間[18]
トールの別名
トールを表すケニング
ロキを表すケニング
ギュミルを表すケニング
黄金を表すケニング
詩(詩の蜜酒)を表すケニング
船を表すケニング
斧を表すケニング
牡牛を表すケニング
狼を表すケニング
天を表すケニング
岩を表すケニング
石を表すケニング
願いを表すケニング
- bergrisi[3]、bergrisar[1] 山の巨人[3] [男][3] (berg 岩 [中])[3]
- hrímþurs[3]、hrímþursar[1] 霜の巨人[3]
- Þursa[13] 巨人の[1]
- jǫtna[3] jǫtunn(巨人)の[3]
- jǫtunmóðr[3]、jötunmóð[9] 巨人の怒り、激怒[3] [男][3] (móðr 怒り、勇気 [男])[3] :用例『鍛冶屋は巨人の怒りに燃えた[1]』『フルングニルは巨人の怒りにかられていた[2]』
- gýgr[3] 巨人の女[3] [女][3]
- gýgjar[3] 巨人女を守る者[3]
- troll[3] トロル(ノルウェーの民話にあらわれる怪物;ユミルの死体から出たうじ)[3] [中][3]
参考文献
新釈北欧神話版
概要
巨人
原初の巨人ユミルを指す。
巨人族
巨人ユミルが独りでに産み落とした人類の総称。
巨人族は、大地の巨人族、岩の巨人族、海の巨人族、霜の巨人族に大別される。
ほとんどの巨人族は、体内魔素の影響で結膜が黒く、体に紋様が浮き上がるという特徴的な見た目をもつ。また、体格や体力、膂力、魔力などが強い傾向にある。
巨人族の中で、霜の巨人族の集落はユミルの血の洪水の直撃を受け、ヴァク、ヴィリ、ミーミル以外は全滅したとされる。