– 目次 –
原典版
登場する文献と役割
所有物
別名
ケニング
語源・関連語
オーディンとトール、どちらが格上だったか
各地に残るオーディン信仰
キリスト教下でのオーディンの扱い
参考文献
新釈北欧神話版
Óðinn[3][9][12][13][16][22](オーディン[1][2][3][6][7][10][11][18][23][26][27][28][29][30][32]、オージン[16][25]) 狂う[15]、激怒する[15] [男][3][27]
英語Odin[3]
独語Wodan[27](ヴォーダン[27][28][29]、ウォーダン[26][28]、ウォータン[26])
原典版
概要
- 北欧神話の主神[3][16][30]、万物の父[3]、万物の支配者[30]
- アースガルズの支配者[18]
- オーディン、ヴィリ、ヴェーの三柱で三幅対を成す(=ボルの息子達)[4]
- 死の神[1][23][29][30]、王侯の神[1][23][30]、戦の神[1][23][29][32]、軍神[30]、詩の神[1][23][30]、知恵の神[1][30][32]、魔術の神[1]等さまざまな面をもつ[1]。このエッダ神話におけるオージンの複雑な神格は、もともと複数の神々が分有していた諸特質を一神に集中化している結果ではないかと考えられる[16]
- ゲルマン神話の最高神[27][28][29]。元来は風の神[27][29]
- 戦場で名誉の死を遂げた勇士を、ヴァルキューレを使ってヴァルハラへ召し上げる[1]
- 知恵の小人ミーミルの頭と語って助言を受ける[27]
- 巨人族出身のロキと血を混ぜ、義兄弟となる[27]
- ルーン文字を伝えたとされている[30]
- ラグナロクでは、巨大なオオカミの怪物のフェンリルに食べられてしまう[32]
- スノッリによれば、オージンはかつて年3度、豊年(初冬)と五穀豊穣(真冬)と武運長久(夏)を祈願して犠牲を捧げたという[16]
- 『デンマーク人の事績』にてハディングが死者を目覚めさせて神々の意志を語らせた部分と、『バルドルの夢』で冥府に行ったオーディンが死者を目覚めさせる魔法の歌をうたって起こした巫女に言葉を語らせる部分とが非常に酷似している[11]
- 『デンマーク人の事績』にてハディングがマントの老人にくさび型陣形を教わる場面は、『レギンの歌』にてシグルズがフニカルを名乗ったオーディンから同様の陣形を教わる場面と酷似している[11]
巫女の予言
- 巫女に対して、過去の出来事を語るように要求する[1]
=その語らせた内容が、『巫女の予言』である - アスクとエムブラに息を与えた[1]
- ミーミルの泉の中に片眼を隠した[1]
- ミーミルは毎朝、戦の父の担保から蜜酒を飲む[1]
― af veði Valföðrs.「戦士の父の担保より」とは何か? - ヴィーザルの父[1]
- 世界の終末のおり、狼に戦いを挑むが、倒れる[1]
オーディンの箴言
- ロッドファーヴニルに対して様々な忠告を行う[1]
=その忠告の内容が、『オーディンの箴言』である - 小人のスョーズレーリル(Þióðrørir[13])がデリングの扉の前でルーネのまじないを唱え、アース神に力を、妖精に利益を、オーディンに知恵を吹き込んだ[1]
- ベルソルの息子たちが、オーディンに九つの魔法の歌を教えた[1]
- グンロズの家で、記憶を失うほどに酔ったことがある[1]
- スットゥングとその娘グンロズを欺いて蜜酒を奪った[1]
- 賢者フィアラルのところでも酔ってへべれけになった[1]
- 巨人ビリングの娘がたいそう美しかったため誘惑しようとしたが、結局ものにできなかった[1]
- 風の吹きさらす樹に九夜の間つり下がり、ルーネ文字を読み取った[1]
― この部分に関しては様々な異説がある
ヴァフズルーズニルの歌
- 物識りの巨人ヴァフズルーズニルのところに知恵比べをしにいく。その際は、ガグンラーズと名乗り正体をいつわる。最後にオーディンしか知り得ない質問をし、自身の正体をばらす[1]
- 神々が滅びるとき、狼にのみ込まれる[1]
- 息子(管理人注:バルドル)が火葬薪のうえにあがる前に、その耳になにかをささやいた[1]
グリームニルの歌
- アグナルとゲイルロズが兄弟で釣りに行って船が難破した際、小作人の男に変装しゲイルロズを拾って養子に育てた。その後、同じくアグナルを拾って養子にしていたフリッグと互いの養子のどちらが優れているかを言い合った末、黒いマントを羽織って変装し、グリームニルと名乗り、王となったゲイルロズの元へ訪れる。しかし事前にフリッグから忠告を受けていたゲイルロズに捕らえられ、拷問を受けてしまう。みかねた王の息子アグナルに角杯を手渡され、かわりに祝福を与える[1]
=その際に語った様々な物の名前や知識が、『グリームニルの歌』の主な内容である - オーディンは葡萄酒だけで生きている[1]
- アース神のうち最高のもの[1]
スキールニルの旅
ハールバルズの歌
- 渡し守の姿に変装し、ハールバルズと名乗ってトールと言い合いをする[1]
- アルグレーンという島に住むフィヨルヴァルの元に丸五年滞在した時は、戦ったり、戦士を倒したり、多くのことを試したり、女の子の尻を追いかけ、七人姉妹全員と懇ろになったりしていた[1]
- フレーバルズという巨人が持っていた正気を失わせる魔法の杖を奪い、その妻をだまし取った[1]
- ヴァルランドでは戦いを求めて歩き、諸侯に戦をけしかけた[1]
- 戦いで倒れた戦士はオーディンのものとなる[1]
ロキの口論
- フリッグの夫、ヴィーザルの父[1]
- エーギルが開催した酒宴に参加する[1]
- かつてオーディンはロキと血を混ぜた[1]
― 訳注:友が互いに血盟を誓った[1]
― 管理人注:この後の十六節において「ブラギとロキは実子と養子の仲」であると記載されているため、オーディンとロキは義兄弟ではなく養子の関係であったことを示唆している - 人間の運命を知り尽くしている[1]
- ロキに、勝利を人間たちに公平に分けないことを侮辱された。さらに、サームス島で魔女の姿をして巫女のように呪文をつかったことを侮辱された[1]
- いずれ狼に飲み込まれる[1]
フンディング殺しのヘルギの歌Ⅰ
フンディング殺しのヘルギの歌Ⅱ
レギンの歌
- ヘーニル、ロキと共にアンドヴァラフォルスを訪れ、そこで魚を捕って食べていた獺をロキが仕留め、皮をはいでフレイズマルのところに夜の宿を求めて訪れた。しかしその獺はオトというフレイズマルの息子であったため、三人はフレイズマルにとらえられ、黄金の賠償を要求された。黄金を手に入れるためにロキを遣わせたオーディンは、手に入れた財宝をフレイズマルに渡し、獺の皮に詰め、足で立たせ、黄金を積み上げてそれを覆った。ところが鬚が一本出ていたため、腕輪アンドヴァラナウトでその鬚を覆った[1]
ファーヴニルの歌
シグルドリーヴァの歌
- 兜のグンナルとアグナルという二人の王が戦う際、グンナルに勝利を約束したが、ヴァルキューレのシグルドリーヴァがグンナルを倒してしまったため、その仕返しに彼女を眠りの茨で刺し、今後戦で勝利を得ることも、嫁入りすることも禁じた。そしてシグルドリーヴァの眠りのルーネをとくことができないようにし、ヒンダルフィヤルの山頂に閉じ込めた[1]
- ヘイズドラウプニルの頭とホッドロヴニルの角杯から滴った飲物から知恵のルーネを手に入れた。頭に兜をかぶり、ブリミルの剣を引っさげて岩の上に立ち、ミーミルの頭からルーネでしるされた真の知恵を教えられたという[1]
ブリュンヒルドの冥府への旅
- ブリュンヒルドがゴート族の国で老ヒャールムグンナルを死なせてアウザの若い弟を勝たせたため激怒し、彼女をスカタルンドに眠らせて閉じ込めて周りを火で取り囲んで、勇士以外は彼女をめざめさせられないようにした[1]
バルドルの夢
- バルドルが見た悪い夢を確かめるために、スレイプニルに乗りヘルへと向かい、魔法の歌で目覚めさせた巫女にバルドルの死の原因を尋ねる。そこで、バルドルはヘズによって殺害されるが、リンドとの間にもうけた子ヴァーリがその復讐を行うことを知る[1]
ヒュンドラの歌
フン戦争の歌 またはフレズの歌
スノリのエッダ 序文
- ヴォーデン(Vóden[12])とも呼ばれる。トールとシヴの18代後の子孫。フリズレイヴの子[6]
- 知恵とあらゆる技芸に優れた男であり、予言の才ももっていた[6]
- フリッグを妻にした[6]
- エーシルたちを連れてトロヤを旅立ち、北方の国々、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、サクスランドを旅して支配し、多くの子孫を残した[6]
ノルウェーを支配した子孫
スウェーデンを支配した子孫
デンマークを支配した子孫
サクスランドを支配した子孫
- Vegdeg[12] ヴェグデグ[6] オーディンの息子。権勢のある王で、東サクスランドを支配した[6]
- Vitrgils[12] ヴィトルギルス[6] ヴェグデグの子[6]
- Vitta[12] ヴィタ[6] ヴィトルギルスの子。シガルの兄弟。ヘンゲストの父[6]
- シガル[6]
- Beldeg[12] ベルデグ[6] オーディンの息子。バルドルとも。ヴェストファール(Vestfál[12])と呼ばれる国を支配した[6]
- Brandr[12] ブランド[6] ベルデグの子[6]
- Frjóðigar[12] フリョージガル[6] フロージとも。ブランドの子[6]
- Freóvin[12] フレオーヴィン[6] フリョージガルの子[6]
- Uvigg[12] ウヴィッグ[6] フレオーヴィンの子[6]
- Gevis[12] ゲヴィス[6] ガヴェ(Gave[12])とも。ウヴィッグの子[6]
- Sigi[12] シギ[6] オーディンの息子[6]
- Rerir[12] レリル[6] シギの息子。シギとレリルの父方の先祖はフラクランドとよばれる所を支配し、そこからヴォルスング一族が発している[6]
- スウェーデンではギュルヴィと呼ばれる王から望むだけの権力を差し出された。そしてシグトゥーンを街の建設場所に選び、十二の首長をおき、法組織を整備した[6]
ギュルヴィたぶらかし
- あらゆる神々のうちでいちばん尊く、年長の神で、あらゆる時代を超えて生き、全王国を治め、すべてのものを支配している[1]
- 天と地と空気とその附属物すべてを作ったが、天地が作られる前には霜の巨人たちのところにいた[1]
- ボルとベストラの間に生まれた。兄弟にヴィリ、ヴェーがおり、この三兄弟が天地を支配していると考えられている[1]
- ユミルを殺害し、天地を作った。それから太陽と天体を定め、日を分けた[1]
- 人間に息と生命を与えた[1]
- 世界の真中にアースガルズという砦を作った[1]
- フリズスキャールヴという高座について、全世界を見霽かし、すべてを記憶することができる[1]
- オーディンが、自身の力で全ての神々や人間たちやさまざまなものをつくったことから、万物の父といえる[1]
- 娘であり妻でもあるヨルズとの間に、アーサソール(トール)をつくった[1]
- ノートとダグを召し、一日に二度、十二時間毎に大地のまわりをまわるように天においた[1]
- 知恵と知識が隠されたミーミルの泉の水を、自分の眼を抵当にしてやっと飲ませてもらうことができた[1]
- 八本足を持つ最高の名馬スレイプニルを所有している[1]
- ヴァラスキャールヴの広間にあるフリズスキャールヴという高御座にオーディンがつくと、全世界をみはるかすことができる[1]
- アース神のなかでも最高の、最年長の神。すべてのものを支配している[1]
- 全ての神々の父であるため、Alföðr[12](アルファズル。万物の父)と呼ばれている。また、戦場で倒れた者は一人残らずオーディンの養子になってヴァルハラとヴィンゴールヴに送られるため、Valföðr[12](ヴァルファズル。戦死者の父)とも呼ばれる[1]
- オーディンが非常に多くの呼び名をもっているのは、世界中にある様々な言語でその名を呼ぶ際、それぞれの国民がそれぞれの言葉になおす必要があるからといわれている[1]
- 戦死者の半分はフレイヤのものとなり、もう半分はオーディンのものになる[1]
- リンドとの間にヴァーリをもうけた[1]
- 狼(フェンリルのこと)がオーディンを殺すだろうという予言がなされていた[1]
- ヴァルキューレをすべての戦につかわし、人々の死の色を見てとり勝敗を決めさせる [1]
- 戦いで倒れた者はすべてヴァルハラのオーディンのところにいる[1]
- 葡萄酒以外の食べ物や飲み物を必要としないため、彼の食卓にある食べ物は飼っているゲリとフレキという二頭の狼にやっている。またオーディンの肩にはフギンとムニンという二羽の鴉がとまっていて、見たり、きいたりしたすべてをオーディンの耳に告げる。このため、オーディンは人にHrafna-guð鴉神と呼ばれている[1]
- アース神のうちで最高のものといわれる[1]
- バルドルの身代金をもって冥府に向かう息子ヘルモーズに、自身の馬スレイプニルを貸し与えた。バルドルの火葬に自身の鴉と共に参加し、火葬薪の上にドラウプニルという黄金の腕輪を置いた。その後バルドルがヘルでヘルモーズと再会した際、バルドルからの記念品としてドラウプニルが贈られた。バルドルを殺害させたロキが逃げ出した時には、フリズスキャールヴからその逃亡先を見つけ出した[1]
- ラグナレクのおり、ミーミルの泉に赴いてミーミルの助言を求める。黄金の兜をいただき、美しい甲冑を身にまとい、グングニルという槍を手にして先頭を切って馬を進める。そしてフェンリル狼と戦うが飲み込まれ、ヴィーザルがその仇を討つ[1]
詩語法
- エーギルをもてなす酒宴の席に参加する[2]
- また、その後にエーギルが開催した酒宴の席にも参加する[2]
- ロキ、ヘーニルと共に旅に出かけ、その途中で巨人シャチに化かされる[2]
- 名馬スレイプニルに乗りヨーツンヘイムの巨人フルングニルの元に出かけ、これに匹敵する馬はヨーツンヘイムのどこにもいないと自慢したことで競走になる[2]
- ロキがイーヴァルディの息子達およびシンドリ・ブロッグ兄弟に作らせた宝のどちらが優れているかを判定する場面で判決者として登場し、槍グングニルと腕輪ドラウプニルを贈られる[2]
- スキョルドという息子がおり、彼からスキョルドゥング一族が発祥している[2]
- 世の中を知るために、ロキ、ヘーニルと共に旅に出た。道中ロキが川うそを狩り、その夜農夫フレイズマルの元に宿を求めたが、殺した川うそは彼の息子だったことが判明し、賠償を支払う約束をする。ロキが小人アンドヴァリの全財産を奪って帰ってきた際、小人の死の呪いのかかった腕輪をこっそり懐に収めるが、最終的には賠償としてフレイズマルに差し出した[1]
- クヴァシルの血から造られた詩の蜜酒を取り返すために、ボルヴェルクと名乗りスットゥングの兄弟の巨人バウギの元へと向かい、一夏のあいだ九人分の仕事をしたが、スットゥングは蜜酒を飲む許しを出さなかった。そのためオーディンは、ラティという錐を用いて蜜酒の隠し場所であるフニトビョルグに穴を空け、見張りの娘グンロズと三晩床を共にし、蜜酒を三口飲む約束をさせる。そして三口で全ての蜜酒を飲み干したオーディンは鷲の姿でアースガルズに逃げ帰り、蜜酒のほとんどを取り返すことに成功する[2]
ユングリンガサガ
- アースガルズの支配者。ヴェー、ヴィーリルという兄弟がいる。偉大な戦士で、多くの国々を所有していた。どの戦でも勝利をおさめる無敵の戦運にめぐまれており、戦地や旅に出る者に祝福を与えた。何年ものあいだ旅にでて国を留守にすることが多かったが、あるときあまりにも長く帰国しなかったため、もはやオーディンは帰らないのではと考えた兄弟たちは、オーディンの遺産を分け、妻のフリッグを二人で共有した。その後オーディンはまもなく帰国し、妻を取り返した[18]
- ヴァンに対して軍を進め、その後、和平を結んで人質を交換した。ところが人質交換でアースに欺かれたと感じたヴァンによりミーミルは首を刎ねられた。その首を受け取ったオーディンは、腐らないように薬草を塗り、呪文をとなえて魔力を与え、口を利けるようにして、多くの秘密を聞き出した。また、人質交換でアースのもとにやってきたニョルズとフレイを供犠の司祭につかせた[18]
- スキョルドという息子がいる[18]
- 未来が読め、魔法に通じていた。自分の子孫が世界の北の地方に住むことが分かっていたため、兄弟のヴェーとヴィーリルを残して、ディーアル全員と民衆を引き連れてアースガルズを去り、西のガルザリーキへ向かい、さらに南のサクスランドに行き、国々を手中に収めて息子たちを国の守りにつけた。さらにそこから北進してフュン島に住居を定め、オーデンセと名付けた。さらに東のギュルヴィのところでよい土地が手に入ると聞くと、ギュルヴィの元へでかけていろいろな魔法や目くらましで競い合い、勝ちをおさめてギュルヴィと和睦を結んだ。そしてログ湖畔の古シグトゥーナに広大な居住地を得て、その地をシグトゥーナと名づけ、神殿のゴジらすべてに分け与えた[18]
- 他の誰よりも昔から、また他の誰よりも多くの技芸を心得ており、他のディーアルとともに北の国に来た時に、そこに住む人々に様々な技芸を教えた。また意のままに顔形や姿を変える術を心得ており、さらにたいへんに雄弁で流暢に話をし、話す言葉はスカルド詩のようにすべて韻を踏んでいたため、オーディンとその神殿の司祭たちは「ljóðasmiðir[22](歌謡鍛冶)[18]」と呼ばれた。戦においては、オーディンが一撃を加えると敵は弱体化し、味方はベルセルクの逆鱗とよばれる狂暴状態になって戦った[18] (smiðr 鍛冶屋 [男] 英語smithに相当)[3]
- 鳥や獣などに変身したり、一瞬で遠くの国へ飛んでいったり、言葉一つで火を消したり、海を静めたり、風向きを変えたりすることができた。また死者を地中から呼び覚ましたり、絞首台にかけられている者の下に座ったりした(そのためオーディンは「drauga dróttinn[22](死者の王[18])」とか「hanga dróttinn[22](縛り首にされた者の王[18])」とも呼ばれた)。これらすべての技芸をルーン文字と「魔法」という名の歌で人々に教えた。そのためアースたちは「galdrasmiðir[22](魔法の歌の鍛冶屋[18])」と呼ばれる。また「seiðr[22](呪文[18])」という技芸を用いて人々の運命や未来を読み解いたり、人に死や災いや病をもたらすこともできた。オーディンは術の大部分を供犠司祭たちに教えたため、彼らは知識と魔法のすべてにおいてオーディンに次ぐ存在となり、人々はオーディンと十二人の首長らを神と呼び、その後も長く信仰をつづけたという[18] (dróttinn 主人、領主 [男])[3](galdr 魔法 [男])[3](seið síða(呪文で魔術を行う)の過去単数形)[3]
- 大洋を航行することのできるスキーズブラズニルという船をもっていた[18]
- ミーミルの首をいつも手元に置いていて、その口から外国の事情を聞き出した。また言葉を話すことができる二羽の鴉を飼っており、国中を飛び回らせて情報を収集したため、驚くほどの情報通であった[18]
- 古来アースの元で行われてきた掟を新しい国にも導入し、死者はすべて財産と共に焼かれ、その富を持参してヴァルハラに行くべきであると定めた。また全スヴィーショーズで人々はオーディンに一人当たり1ペニーを税として支払い、代わりにオーディンは彼らを守護した[18]
- スカジと結婚し、セーミングをはじめとする多くの息子をもうけた[18]
- 今わの際に槍の先で自身に印をつけさせ、自分はゴズヘイムに行くので武器で死んだすべての者を自分のところに届けよと命じて、スヴィーショーズで病死し火葬された。以後スウェーデンの人々はオーディンが古アースガルズで永遠に生きており、大きな戦が起こる前には姿を現すものと信じた。こうしてオーディン信仰と祈祷が始まった。その後、(フレイの孫にあたる)王スヴェイグジルは、ゴズヘイムと老オーディンを探して世界中を巡った[18]
- オーディンがスウェーデンの首長となってからアグニが死ぬまで、ウプサラで王位についた者が全スウェーデンを支配する専制君主であった[18]
- スウェーデンのアウン王が長寿の為に自らの息子を生け贄にささげて供犠を行った際、彼がこの先何年生きられるかを伝えた。その後、アウン王が二人目の息子を生け贄にささげて供犠を行った際には、十年に一度息子を生け贄にささげる限りずっと生き続けられると伝えた[18]
ソルリの話とヘジンとホグニのサガ
- アシーアランドの都アースガルズを支配する王。ニョルズの娘フレイヤを愛人とし、非常に愛していた。またロキを部下に持ち、しばしばやっかいな骨折り仕事を課したが、ロキが何をしようが何事でもその肩をもった。フレイヤがどのような手段で黄金の首飾りを手に入れたかをロキから聞くと、彼に命じてその首飾りを手に入れさせた。そしてその首飾りの返却を求めてきたフレイヤに対し、「勇敢なキリスト教徒のものが武器を持ってそれを止めるまで、二人の王が闘って倒れてもまた立ち上がって戦闘するように呪いと魔力をかけろ」と命じた[16]
デンマーク人の事績
- Othinus[24](オティヌス[11])。当時全ヨーロッパで神とみなされており、ウプサラにたびたび滞在するのが常であった。北方の王たちの熱烈な崇拝により、自身の黄金の立像がビザンチンに送られた。妻のフリッガが、着飾るための黄金を手に入れようと鍛冶屋に命じて黄金の立像を奪おうとしたため、鍛冶屋らを絞首刑にし、人間が触れると黄金の立像が言葉を話せるようにした。ところがフリッガが再度、奴僕の一人の陵辱に身を任せてその手を借りて黄金の立像を破壊したため、不法と不倫に傷つき、国を去った。その後再度国に戻り、その間に国を治めていたミトオティンをはじめ留守の間に顕職についていた全ての者や魔法使いの一団を追い散らし、さらに妻の死により昔の名声を取り戻したという[11]
- Ásaóðinn[22] アースのオーディン[18]
- Atríðr[1][12][13](アトリーズ[1]) 馬に乗って突進するもの[1] (ríða 馬で行く 英語rideに相当)[3]
- Aldafǫðr[13](アルダフェズル[1]) 神々の父[1]、人々の父[2] (aldaはǫld(時代、人類)の属格複数形)[3] (faðir 父)[3]
- Alfǫðr[1]、Alföðr[9][12]、All-fǫðr[3](アルファズル[1]、アルフォズ[2]) 万物の父[1][26] [男][3] (allr すべての [代])[3]
- Iálcr[1]、Iárc[13]、Jálkr[12](イァールク[1]) 顔をかえることのできるもの[1] アースムンドのところでの名、また神々のところでの名[1]
- Jálg[12](イァールグ[1])
- Váfuðr[1][12][13](ヴァーヴズ[1])
- Vacr[1][13]、Vakr[12](ヴァク[1])
- Valföðr[12]、Valfǫðr[1][3][13]、Valfaðir[3](ヴァルファズル[1]) 戦死者の父[1]、戦士の父[1] (val- 倒れた英雄)[3]
- Viðurr[1][12][13](ヴィズル[1][2] 滅ぼす者[1]) 戦場での名[1]
- Viðrir[12](ヴィズリル[1][2]、ヴィーズリル[2])
- Vegtamr[1][13](ヴェグタム[1][25]) 道に慣れたもの[1] ヘルで蘇らせた巫女に対して名乗った偽名。ヴァルタム(Valtamr 殺しに慣れたもの)の息子(という設定)[1]
- Veratýr[1][12][13](ヴェラチュール[1]) 人間の神[1] (týr 神)[3]
- Uðr[1][12][13](ウズ[1])
- Ofnir[13](オヴニル[1])
- Ósci[1][13]、Óski[12](オースキ[1][2]) 望むもの[1] 神々のところでの名[1]
- Ómi[1][13](オーミ[1])
- Gautr[1][12][13](ガウト[1][2][7]) 神々のところでの名[1]
― 固有名詞として「ガウトのチュール[2](ガウトの神[1])」とする説もある[1] - Gagnráðr[1][13](ガグンラーズ[1]) 勝利を決める者[1] 物識り巨人ヴァフズルーズニルの館で名乗った名[1]
- Gangleri[1][3][12][13](ガングレリ[1])
- Kialar[1][13]、Kjalarr[12](キャラル[1][2]) 船人[1] そりを引くときの名[1] (kjóll 船 [男])[3]
- Glapsviðr[1][12][13](グラプスヴィズ[1]) 誘惑に長じたもの[1] (glepja 誘惑する)[3]
- Grímr[1][12][13](グリーム[1])
- Grímnir[1][12][13](グリームニル[1][2][10]、グリムネル[25]) 仮面をかぶる者[1] ゲイルロズ王の館で名乗った名[1]
- Gǫndlir[1][13]、Göndlir[12](ゲンドリル[1]) 魔法の心得あるもの[1] 神々のところでの名[1] (gandr 魔法の杖、魔法 [男])[3]
- Saðr[1][12][13](サズ[1]) 真実のもの[1]
- Sanngetall[1][12][13](サンゲタル[1]) 真実をおしはかるもの[1] (sannliga まことに、真に [副])[3]
- sig-Týr[9] 勝利のチュール[2] (sigr 勝利 [男])[3] (týr 神)[3]
- Sigfǫðr[1][13]、Sigfaðir[3]、Sigföðr[12](シグフェズル[1]) 戦の父[1]、戦いの父[26]、勝利の父[3] [男][3](faðir 父)[3]
- シーズグラニ[1]
- Síðsceggr[1][13]、Síðskeggr[12](シーズスケッグ[1]) 長髭のもの[1]
- Síðhǫttr[1][13]、Síðhöttr[12](シーズヘト[1]) 目深に帽子をかぶったもの[1]
- Sváfnir[13](スヴァーヴニル[1])
- Sviður[1]、Sviðurr[12][13](スヴィズル[1]、スヴィザル[1]) 槍をもつもの[1] セックミーミルのところでの名[1]
- Sviðrir[1][12][13](スヴィズリル[1]) 槍をもつもの[1] セックミーミルのところでの名[1]
- Svipall[1][12][13](スヴィパル[1]) 姿をかえるもの[1]
- Scilfingr[1][13]、Skilfingr[12](スキルヴィング[1]) 高座につくもの[1] 神々のところでの名[1]
- Þuðr[12](スズ[1])
- Þriði[1][3][12][13](スリジ[1][2])
- Þrór[1][12][13](スロール[1])
- Þundr[1][12][13](スンド[1])
- Þekkr[12]、Þeccr[13](セック[1])
- Nikarr[12](ニカル[1])
- Nikuðr[12](ニクツ[1])
- ハーヴィ[1] 高き者[1]
- Haptaguð[12](ハプタグズ[1]) 捕らわれる神[1]
- Hár[1][3][13](ハール[1][2])
- Hárr[1][12](ハール[1][2]) 白髪の老人[1]、白髪の人[3] [男][3]
- Hárbarðr[1][12][13](ハールバルズ[1]) 灰色の髭[1] 神々のところでの名[1] (barð 草地 口の上の髭の同義語 [中])[3]
- Báleygr[1][12][13](バーレイグ[1][2]) 焔の眼をせるもの[1] (Bál[3][9] 火葬の薪[2]、火葬台[3] [中][3])
- Hangaguð[12](ハンガグズ[1]) 捕らわれる神[1]
- hanga-Týr[9](ハンガチュール) 吊されたチュール[2]、吊されし神[2]、吊りさげられたもの[26] (týr 神)[3]
- ハンギ[2]
- Hiálmberi[1][13]、Hjálmberi[12](ヒァールムベリ[1]) 兜をつけるもの[1]
- Bifliði[12](ビヴリジ[1])
- Biflindi[1][12][13](ビヴリンディ[1]) 楯をふりまわすもの[1] 神々のところでの名[1]
- ヒャランディ[7]
- Hildólfr[1](ヒルドールヴ)[1] 戦の狼[1] (hildr 戦い)[3](úlfr ウールヴ 英語wolfに相当 [男])[3]
- Bileygr[1][12][13](ビレイグ[1]) 片眼を欠くもの[1]
- Farmatýr[1][12][13]、farma-Týr[9](ファルマチュール[1]) 船荷の神[1]、船荷神チュール[2]、荷のチュール[2]
- Farmaguð[12](ファルマグズ[1]) 荷物神[1]
- Fiǫlsviðr[1]、Fiolsviðr[13]、Fjölsviðr[12](フィヨルスヴィズ[1]) 途方もなく賢いもの[1]
- Fiǫlnir[1]、Fiolnir[13]、Fjölnir[12](フィヨルニル[1][10])
- Fimbultyr[1](フィムブルチュール[1]) 偉大で崇高な神[1] [男][3] (fimbul 恐ろしい)[3]
- Fengr[13](フェング[1])
- Hnicarr[1][13]、Hnikarr[12](フニカル[1])
- Hnicuðr[1][13]、Hnikuðr[12](フニクズル[1]) 突くもの[1]
- フリムニル[2]
- Blindr[1](ブリンド[1]) 盲目[1] フンディング殺しのヘルギの歌Ⅱに登場。ヨハネソンによれば、オーディンのこととされる[1]
- Hroptatýr[12][13](フロプタチュール[1][2]) 神々のところでの名[1]
- Hroptr[1][13]、Hróptr[3](フロプト[1][2]) 叫ぶ者、語る者[1]、魔術を行う者[3] [男][3]
- Herran[12](ヘラン[1])
- Herjann[1][3][12]、Herjan[12]、Herian[13](ヘリアン[1]) 軍勢の王[1][2] 軍隊の長、将軍[3] [男][3]
- ヘルガウト[2]
- Herteitr[1][12][13](ヘルテイト[1]) 軍勢の名で快く感じるもの[1] (teitr 陽気な [形])[3]
- Helblindi[1][12][13](ヘルブリンディ[1])
- Heriafǫðr[13]、Herfǫðr[3]、Herjafǫðr[3](ヘルヤフェズル[1]) 軍勢の父[1] [男][3]
- Bölverkr[9][12]、Bǫlvercr[13](ボルヴェルク[2]、ボルウェルク[2][26]、ベルヴェルク[1]) 禍いを引きおこす者[1] 巨人バウギの元で働いた時に名乗った名[2] (bǫl böl 悪、害 [中])[3]
- Iafnhár[1][13]、Jafnhár[3]、Jafnhárr[12](ヤヴンハール[1])
- Yggr[1][3][9][12][13](ユッグ[1][2][7][10][30]) 恐ろしき者[1]、恐るべきもの[1] 神々のところでの名[1]
- Yggiungr[3] [男][3]
- reiðar-Týr[9] 車のチュール[2] (týr 神)[3]
- ログニル[2]
- alda gautr[3] 世界の創造者[3] (aldaはǫld(時代、人類)の属格複数形)[3]
- galdrs faðir[3] 魔法の歌の父[1]、魔術の父[3] (galdr[3][9] 魔法[3]、呪文[2] [男][3])
- goðjaðarr[9] 神々の候[2]、神々の支配者[2]、神々の指導者[2] (goð 神(異教の) [中])[3] [9]-9.(15)
- ása niðr[22] アースの親族[18]
- Hertýr[9] 軍勢のチュール[2] (týr 神)[3]
- Hrafnáss[9]、Hrafna-guð[12] 鴉神[2] (Áss[1][3] エーシル神族の神[3] [男][3])
- Míms vinr[9] ミーミルの友[2] (vinr 友人 [男])[3] [9]-9.(15)[9]-10.(37)
- úlfs bági[9] 狼の敵[2] (úlfr[3][9] 狼[3] 英語wolfに相当[3] [男][3]) [9]-9.(16)
- 狼の危険[6]
- Friggjar angan[3] フリッグの喜び[3] (angan 歓喜 [中])[3]
- フリッグの片眼の夫[2]
- グンロズの腕の大胆な重荷[2] [9]-9.(13)
- ベストラの子[2] [9]-9.(25)
- ブールの嗣子ボルの子[2] [9]-9.(26)
- フリズスキャールヴの王[2] [9]-9.(22)
- ヴィリの兄[18]、ヴィーリの兄[2] [9]-9.(15)
- ユングヴィの一門の支配者[2] [9]-9.(21)
- ハッディング一門のかしら[2] [9]-72.(262)
- 絞首架の重荷[2] [9]-10.(33)
- 死者のガウト[2]
- 戦にはやるさすらい人[2] [9]-44.(110)
- 戦をいやます者[2] [9]-59.(154)
- 旅に強き者[2] [9]-9.(23)
- 鴉の聴き手[2] [9]-9.(18)
- 人びとの指揮者[2] [9]-75.(275)
- skatna vinr[22] 人々の友[18] (vinr 友人 [男])[3]
- あら猟師[26]
- 片目の男[26]
オーディンの名に関連するケニング
- ユッグの下僕[2]
- sessa Óðins[9] オーディンの食卓の友[2] (sessi[9] 同席者[2] 仲間の同義語[2])
- sinna Óðins[9] オーディンの道づれ[2] (sinni 仲間 [男])[3]
- mála Óðins[9] オーディンの話し相手[2] (mála[9] 話し相手[2])(mál ことば、事柄、契約 [中])[3]
- vársinna Óðins[9] オーディンの春の友[2] (vár[9] 春[2])(sinni 仲間 [男])[3] [9]-23.
- sessa Óðins[9] オーディンの食卓仲間[2] (sessi[9] 同席者[2] 仲間の同義語[2]) [9]-23.
- son Óðins[9] オーディンの子
- kona Óðins[9] オーディンの妻[2] (kona 女 [女] 英語queenに相当)[3]
- brúði Óðins[9] オーディンの花嫁[2] (brúðr[3][9] 花嫁[2][3] [女][3] (brideに相当)[3])
- バーレイグの大顔の花嫁[2] [9]-32.(80)
- ヘルガウトのいとしき者[2] [9]-51.(117)
- ハンガチュールの帽子[2]
- スンドの門[7]
- スンドの門(盾)の垣[7]
- veðr herkonunga[9] 軍勢の王の嵐[2] (Veðr[3][9] 天気、風[3] 英語weatherに相当[3] [中][3])(konungr 王 [男] 英語kingに相当)[3]
- veðr Óðins[9] オーディンの嵐[2]
- Yggjar él[10] ユッグの嵐
- ハールの嵐[2]
- Viðris veðr[12] ヴィズリルの嵐[2]
- ハールの雪嵐[2]
- ユッグの雪嵐[2]
- オーディンの集会[2]
- Yggjar leikr[10] ユッグのたわむれ[10] (leika 遊ぶ)[3]
- drykk Óðins[9] オーディンの飲み物[2] (drykkja 飲むこと、一気飲み [女])[3]
- farmr Óðins[9] オーディンの重荷[2]
- feng Óðins[9]、fengr Óðins[9] オーディンの分捕品[2]、オーディンの獲物[2]
- fund Óðins[9]、fundr Óðins[9] オーディンの発見[2]、オーディンの見つけもの[2]
- gjöf Óðins[9] オーディンの贈物[2] (gjǫf 贈り物 [女])[3]
- hrostabrim Alföður[9] 万物の父の麦芽の浪[2] (allr すべての [代])[3](faðir 父)[3]
- hverlögr Óðins[9] オーディンの鍋の液体[2] (lǫgr 水、海 [男])[3]
- Óðins mjöð[9] オーディンの蜜酒[2] (mjǫðr 蜜酒(北欧神話の飲み物。ギリシア神話のnectarにあたる) [男])[3]
- Óðinsægir[3] オーディンの海[3] [男] [3] (ægir 海 [男])[3]
- フリムニルの角盃の川[2]
- オーディンの胸の流れ[2]
- オーディンの胸の海[2]
- グンロズの腕の大胆な重荷(オーディン)の古き角杯の滝[2]
- ヴィズルの獲物
- ユッグの獲物[7]
- ユッグの飲み物[30]
- グリームニルの贈物[10]
- ガウトの贈物[2]
- ハールの飲み物[2]
- ログニルの浪[2]
- 神々の支配者の飲み物[2]
- ハールの広間の酒樽の波[7]
アース神族を表すケニング
ヘーニルを表すケニング
ロキを表すケニング
トールを表すケニング
テュールを表すケニング
ヴィーダルを表すケニング
ヴァーリを表すケニング
バルドルを表すケニング
ホドを表すケニング
ヨルドを表すケニング
フリッグを表すケニング
ヴァルキュリヤを表すケニング
ヴァルホルを表すケニング
剣を表すケニング
兜を表すケニング
盾を表すケニング
盾の壁を表すケニング
鎧を表すケニング
鷲や鴉を表すケニング
狼を表すケニング
男を表すケニング
戦いを表すケニング
詩(詩の蜜酒)を表すケニング
詩人を表すケニング
オーディンとトールのどちらが先に民衆に崇拝されていたかについては、学者の間で様々な議論が行われておりはっきりしない。(同じ『スノリのエッダ』の中でも、『序文』ではオーディンはトールの子孫であるのに対し、『詩語法』や『ギュルヴィたぶらかし』などでは逆にトールがオーディンの子として描かれているなど、古典のなかでも扱いにばらつきがある)
- トールはオーディンの息子で、後にオーディン以上に民衆に崇拝された[3]
- はじめ、スカンジナヴィアの農民の間でトールが主に崇拝されていた。その後ライン河畔から発したオーディン崇拝が戦士や貴族階級を中心に北に広がり、やがてトールはオーディンの子となった[1]
- 性格や役割が単純ではっきりしているトールに比べ、オーディンが複雑で多様な特性を持っているのは、オーディンが後から神話に入り様々な要素があわさって神格が出来ていったからだとも考えられる。また、もともと農民の神のトールが北欧にいたところへ、後からオーディンが入っていったという説が唱えられている[23]
- もともと王侯や戦士の守護神であったオーディンが、ヴァイキング時代に政治権力者たちの地位の上昇とともに神格を高めた[30]
- トールのほうがオーディンより古い、格の高い神らしい証拠も多くある[15]
- オーディンの信仰は南のガウトランドから来たという説もある[1]
- デュメジルの三機能説では、最上に荒ぶる神と掟の神という主権を表す二面の神がおり、荒ぶる神がオーディンで、掟の神がテュールとされている。二番目に戦士的な神がおり、そこにトールがあてはまるとされている。三番目には農民の神があてはめられるという[23]
- ユングリンガ・サガでは、英雄的な人物としてオーディンが描かれている。またスノリのエッダ序文においては、オーディンは神ではなく歴史上の支配者とされ、アシーアにあるアーサヘイムの首都アースガルズの支配者で、東方から北進してかずかずの国々を征服していき、最後は病死し、死後、信仰と祈願の対象になったとされる。このような、オーディンを主神とせず、常勝を約束する支配者とみるエウヘメリズムの見解はスノッリばかりでなく、デンマークのサクソ・グラマティクスの「デンマーク人の事績」にも共通してみられる[18]。オージンはザクセンやフランクの支配者、北欧諸王朝の祖を息子に持った[16]。また当時、ビザンチウムを支配していたと考えられていた[11]
- スイスやドイツなどゲルマン系の国々では、古くから収穫感謝と翌年の豊作と平安を祈って、十一月十一日、主神ヴォーダンを祀る収穫祭を行っていた[28][29]
- かつてウプサラには聖なる森と神殿があり、神殿の内部にはトールを中央にオーディンとフレイの像が建てられており[23][30]、戦いが終わるとオーディンに生け贄が捧げられた[30]
- シェトランド諸島で行われる火祭り「アップ・ヘリー・アー」では、総督ヤールを先頭に五十人近い武装した戦士達が主神オーディンやトールなどの神々を讃える歌を大合唱しながら行進する[28]
- ゴットランドのレールブロで見つかった石碑には、オーディンへの人身御供の儀式などの様子が描かれている[30]
- ゴトランド島のアンドレで見つかった石碑には、スレイプニルにまたがったオーディンが描かれている[32]
- スウェーデンのブロンマで見つかった岩壁には、オーディンとトールの姿が描かれている[30]
- スウェーデンのヴェンデルの遺跡から発掘された出土品の中には、二羽の鴉を従えたオーディンの姿がみえる[30]
- 異教を容赦しないキリスト教文学にあっては、サタンの化身とされるようになる[16]
- キリスト教改宗とともにドイツでは民間信仰の中に取り込まれ、魔性を付加された[27]
- 嵐の夜、特に十二夜に空中を疾駆する悪霊の群ヴィルデヤークト(独語Wilde Jagd。幽鬼の軍勢。[女])をひきいる首領は種々の名前で呼ばれ、解釈も一定しないが、軍神で同時に死者の神でもあるヴォーダン(オーディン)が土俗的信仰の中に生き残ったとする説が有力である[27]
- ヴォーダンは暴風雨の夜など声をたてて疾走する霊たち、また稲妻や雷などの霊を支配していると考えられ、人々は、これに対してまじないごとを口にしたり、十字架を打ち付けるなどの魔除けをさかんにおこなった[29]
- 自由都市ロットヴァイルにおけるファスナハトと呼ばれる祭りでは、キリスト教のもとで死神ブリーラー・レッスルと呼ばれることになったヴォーダンが馬上のおどけた姿で現れ、冬の象徴として鞭で打たれる[28][29]
- オーストリーのミッテンドルフという村では、聖ニコラウス祭の前夜である十二月五日の夜、聖ニコラウスに扮した僧侶などと共に、ヴォーダンが白馬に乗った死神の姿で現れ、子供たちを脅しながら贈り物を配って村を歩く[29]
- オーストリーのサンクト・ヨハンという村では四年ごとに大きなベルヒトの行列が行われ、「美しいベルヒト」や公現節にちなんだ三賢者らと共に、道化役の死神としてヴォーダンが現れ、村中を練り歩く[29]
- ドイツ語では十世紀以前にキリスト教の影響でミット・ヴォッホ(独語Mitt-woch。水曜日。[男])という語ができたが、異教の主神の日であるため不幸の日とされ、また週の中日を意味することから、長続きの仕事を始めるには凶日とされる[27]
参考文献
新釈北欧神話版
序章
第一章

野心溢れる、アース神族の若き指導者。滅びの予言を回避する為に奔走する。
高い行動力と決断力を有するが、感情的になりやすい欠点も持つ。
第二章

アースガルドの主神。
滅びの予言が未だ回避できていないことを悟りながらも、ヴァン神族との戦争に傷付いた国内を立て直す日々に追われる。