トール(ソール)

※当記事には『新釈北欧神話』におけるネタバレが反転して記載されています


Þórr[3][9][12][13][22](トール[1][2][3][6][10][18][23]、ソール[18]) [男][3]

※日本語では「ール[1][3][10]」と表記されることがほとんどだが、原文表記は「Þórr[3][9][12][13]」であるため、「ール[18]」と表記する方が本来の古ノルド語の発音に近い

原典版

概要

巫女の予言

  • 約束によって巨人フレイヤを引き渡すことになりかけた際、トール一人だけが怒りにまかせて打ってかかった。これによって神々と巨人の間で交わされた誓いや約束は破られた[1]
  • 世界の終末のおり、ミズガルズオルムと戦うが相打ちとなる[1]

グリームニルの歌

  • ユグドラシルのところへ判決を下しに行くとき、ケルムト、エルムト、ケルラウグという川を徒渉する[1]
  • 神々が滅びるまでは、スルーズヘイムという場所にいるという[1]

ハールバルズの歌

  • 東の国(管理人注:ヨトゥンヘイム)からの帰途にさしかかった瀬戸で、ハールバルズという渡し守に化けたオーディンと言い合いをする[1]
  • 三つのよい屋敷を持っている[1]
     ― (訳注:この節の前の部分が欠落しており、その三つの屋敷がどこなのかは不明)[1]
  • 戦いで死んだ奴僕の輩はトールのものになる[1]
  • 東の河を守っていたさい、スヴァーラングという巨人の息子たちと戦った[1]
  • フレーセイでは、女のベルセルクを殺した[1]
  • フルングニルと戦って打ち勝ったことをハールバルズに自慢した[1]
  • ハールバルズ曰く、トールが不在の間に家で母親が死んだらしい[1]
  • 怪力の巨人スィアチを殺し、その眼を明るい天に投げた[1]

ヒュミルの歌

ロキの口論

  • エーギルアース神のための酒宴を開催したが、その時東方に行っており、宴には参加しなかった[1]
  • シヴの夫。東の国への旅の道中、手袋の親指の中で縮こまっていたことや、スクリューミルの結んだ革紐をほどけなかったことをロキにバカにされた[1]

スリュムの歌

アルヴィースの歌

  • 美しい娘がいる[1]
  • 自身が不在の間に娘と婚姻を結んだというアルヴィースが家にやってきたとき、彼に様々な質問を投げかけ、日が昇るまで時間を稼いで罠に掛けた[1](訳注:小人は日の光に当たると石になる[1]

ヒュンドラの歌

スノリのエッダ 序文

  • トロール(Trór[12])とも呼ばれる[6]
  • トロヤの王ムーノーン(Múnón[12])(メノーン(Mennón[12])とも)と大王プリーアムの娘プローアンの間に生まれた息子。大変容貌が美しく、怪力無双であった[6]
  • ローリークース(Lóríkus[12])という名の公によりトラキーア(Trákíá[12])で育てられたが、ローリークースとその妻ローラ(Lórá[12])(グローラー(Glórá[12])とも)を殺し、トラキーアを我が物とした[6]
  • シヴと呼ばれる女予言者を妻にし、以下の一族をもうけた[6]
    • Lóriði[12] ローリジ[6] トールとシヴの間の息子。トールに似ていた[6]
    • Einridi[12] エインリジ[6] ローリジの子[6]
    • Vingeþórr[12] ヴィングトール[6] エインリジの子[6]
    • Vingener[12] ヴィンゲネルデ[6] ヴィングトールの子[6]
    • Móda[12] モーダ[6] ヴィンゲネルデの子[6]
    • Magi[12] マギ[6] モーダの子[6]
    • Seskef[12] セスケヴ[6] マギの子[6]
    • Beðvig[12] ベズヴィグ[6] セスケヴの子[6]
    • Athra[12] アトラ[6] アナン(Annan[12])とも呼ばれる。ベズヴィグの子[6]
    • Ítrmann[12] イートルマン[6] アトラの子[6]
    • Heremóð[12] ヘレモーズ[6] イートルマンの子[6]
    • Skjaldun[12] スキャルドゥン[6] スキョルド(Skjöld[12])とも。ヘレモーズの子[6]
    • Bjáf[12] ビヤーヴ[6] ビジャール(Bjár[12])とも。スキャルドゥンの子[6]
    • Ját[12] ヤート[6] ビヤーヴの子[6]
    • Guðólfr[12] グゾールヴ[6] ヤートの子[6]
    • Finn[12] フィン[6] グゾールヴの子[6]
    • Fríallaf[12] フリーアラヴ[6] フリズレイヴ(Friðreif[6])とも。フィンの子[6]
    • Vóden[12] ヴォーデン[6] オーディンとも。フリーアラヴの子[6]

ギュルヴィたぶらかし

  • オーディンの最初の息子。ヨルズを母に持つ。並外れた力を持っており、あらゆる生きものを打ち負かした[1]
  • アース神たちはそれぞれ馬に乗ってウルザンブルンの法廷に毎日赴くが、トールは徒歩で川をかちわっていく[1]
  • オーディンを除くアース神の中で一番偉く、神々と人間たちのうちで一番強い[1]
  • スルーズヴァンガルという場所に国をもち、ビルスキールニルという館を持っている[1]
  • タングニョーストタングリスニルという二頭の山羊のひく車に乗るため、車のトール(Öku-Þórr[12])と呼ばれる[1]
  • 三つの宝を持っているが、そのうちの一つであるミョルニルという槌で、霜の巨人や山の巨人たちの頭蓋骨を数多く打ち砕いた。またもう一つの宝である力の帯を腰におびると、二倍の力がでるという。三つ目の宝である鉄の手套は、槌の柄を握るのになくてはならない[1]
  • ヴィーザルはトールの次に強いといわれている[1]
  • シヴの夫。ウルの継父にあたる[1]
  • ある日トールが東の方に怪物を退治に出かけていたとき、一人の鍛冶屋がアース神のもとにやってきて、立派な砦を造る代わりにフレイヤと太陽と月を報酬に欲しいと申し出た。一度は取り決めが固められたものの、鍛冶屋の正体が山の巨人であること悟った神々が誓いを破り、はせ参じたトールはミョルニル巨人の頭蓋骨を粉々に砕き、ニヴルヘル[1]ではニヴルヘルだが、[12]ではNiflheimになっている)の下に投げ込んだ[1]
  • ある日ロキと共に山羊にひかせた車に乗って旅をし、ある百姓のところで宿をとった。そこでトールは山羊を二頭とも殺して百姓夫婦とその息子スィアールヴィ、娘レスクヴァを食事に誘った。山羊は骨と皮さえ無事であればミョルニルで清めれば復活できるはずだったが、スィアールヴィが忠告を守らず腿の骨をナイフで切り裂き、髄までこじ開けて食べてしまったため、一匹の山羊はびっこになってしまった。怒り狂ったトールに百姓たちは命乞いをし、スィアールヴィレスクヴァがトールの召使となった。山羊を百姓の家に残したトールは、ロキスィアールヴィレスクヴァと共に東のヨーツンヘイムへの旅を続け、道中で非常に大きな小屋を発見して宿を取ったが、夜中にすさまじい騒音と大地震で目が覚めてしまった。翌朝、その騒音と大地震の正体が一同の近くで眠っていた非常に大きな男によるものだったと判明し、怒ったトールは力帯を締め、神力を振るってミョルニルで男の頭をかち割ろうとしたが、男が起きてしまって未遂に終わった。男はスクリューミルと名乗り、一同と途中まで行動を共にした。道中何度もトールはスクリューミルの頭にミョルニルを振るったが、たいしたダメージを与えることはできなかった。やがてトールたちはウートガルズとよばれる城市へたどり着いた。そこでトールは、その地を治める王ウートガルザ・ロキに一芸を披露するように言われ、酒の飲み比べをしたが、少ししか減らすことができなかった。実はこの角杯の底は海に繋がっており、トールが猛烈に飲んだことで海の水が引き、これがいま干潮と呼ばれている。次に大きな灰色の猫を地面から持ち上げる競技に挑戦したが、片足を持ち上げるだけで精一杯だった。最後にウートガルザ・ロキの乳母エリと相撲をし、長い間抵抗したが、最後には片膝をついて敗北した。ウートガルズを去るとき、ウートガルザ・ロキの口から、城と自分たちを守るためにトールらを化かしていたと明かされ、怒ったトールが攻撃しようとしたが、ウートガルザ・ロキの姿も城も消えてしまった。トールはスルーズヴァンガルに引き返し、復讐を果たすために若者の姿をしてミズガルズの大蛇を探しにいき、ヒュミルという巨人と共に漁に出た。ヒュミルの飼っていた牛の中で一番大きいヒミンフリョートという牛の首を餌にミズガルズの大蛇を釣り上げ、槌で殴ろうとしたが、ヒュミルが釣り糸を切ってしまったため、後ろから槌を投げつけて蛇の首を切り落とし、ヒュミルの横面には拳骨を食らわせた[1]
  • バルドルを荼毘に付すための火葬薪をミョルニルで清めていたところ、足元にリトという小人が走り出たので、蹴飛ばして火の中に放り込み焼死させた[1]
  • 鮭に変身し滝に潜んだロキを捕まえる為に、魚とり網の片端をトールが、もう片端をアース神の残り全員がもって手繰り上げた。その網を飛び越えようとした鮭を手でつかんだが、手の中で滑ったので尻尾のあたりをぐいっと力を入れてつかんだ。そのため鮭の尻尾は先細りになっている[1]
  • ラグナレクではオーディンと並んで馬を進め、ミズガルズの大蛇と戦い血祭りにあげる。しかし大蛇が吹きかけた毒のため、九歩その場から引き下がったところで大地に倒れて死ぬ[1]

詩語法

ユングリンガサガ


トールの名に関連するケニング

    ヨルドを表すケニング
    • móður Þórs[9] トールの母[2] (móðir 母 [女] 英語のmotherに相当)[3]
    • 巨人の敵(トール)の母[2] [9]-32.(78)
    ウルを表すケニング
    • stjúp Þórs[9] トールのまま子[2]
    シヴを表すケニング
    • konu Þórs[9] トールの妻[2] (kona 女 [女] 英語のqueenに相当)[3] [9]-29.
    ヨルムンガンドを表すケニング
    • 山羊の主(トール)の巨魚[2]
  • Þórs トールの
  • トールの名は英語のthunderに関係する[3]
  • ラテン語dies Jovis(ユピテルの日)がゲルマンの世界ではThursday(トールの日)と訳された[3]

トールの名が由来の人名・地名

オーディンとトールのどちらが先に民衆に崇拝されていたかについては、学者の間で様々な議論が行われておりはっきりしない。(同じ『スノリのエッダ』の中でも、『序文』ではオーディンはトールの子孫であるのに対し、『詩語法』や『ギュルヴィたぶらかし』などでは逆にトールがオーディンの子として描かれているなど、古典のなかでも扱いにばらつきがある)

  • トールはオーディンの息子で、後にオーディン以上に民衆に崇拝された[3]
  • はじめ、スカンジナヴィアの農民の間でトールが主に崇拝されていた。その後ライン河畔から発したオーディン崇拝が戦士や貴族階級を中心に北に広がり、やがてトールはオーディンの子となった[1]
  • トールのほうがオーディンより古い、格の高い神らしい証拠も多くある[15]

参考文献


新釈北欧神話版

第一章

オーディンの第三子。大地の女神ヨルドとの間の子。
赤ん坊ながら、強い力を持つようだ。

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用語を元ネタに用いた作品の一例