ルーン(ルーン文字、ルーネ、ルーネ文字)

Rúnar[3][13]、Rúnic alphabet[3](ルーン[2][6][27][30]、ルーン文字[3][11][18][25][26][27][30][31][32]) 知恵[3]、秘密[3][27][30]、奥儀[27]、神秘の文字[15]
独語Rune[27](ルーネ[1][27]) [女][27]

原典版

概要

  • 三世紀初めから十四世紀にわたり、スカンジナヴィアを中心としてひろく北欧一帯で用いられたゲルマンの古文字[1][11][27]
  • ルーン文字の基本となるアルファベットは、最初の6文字をとって「フサルク」と呼ばれている[30][32]
  • 北伊文字(エトルスカ文字)、ラテン文字から北欧人が工夫して作りだしたもの。伝説では、オーディンによって伝えられたとされている[30]
  • バイキング時代には数千の碑文や刻銘文が、東は黒海沿岸から西はグリーンランドにかけて残された[27]
  • 主に木片、骨、石、金属の上などに彫って使用された[1][27]。彫ったルーネ文字を削り去り、火中に投ずると効果もやむとされる[1]
  • ルーネ文字は古くは呪術と深い結びつきをもっており、シグルドリーヴァの歌で詳しく伝えられている[1]
  • アイスランドでは最近まで、航海に出かける前に船のともと舳先にルーネを彫ったという。また近代になってからもSルーネの助けをかりて眠りの魔法を行っている。このルーネを枝や葉の上に何度も彫りつけ、それを寝ている者の髪の中か、服の胸の上へ突っ込むと、それが落ちるかとり去られないうちは決して眠りは去らないという[1]
  • スウェーデンにはルーン文字の碑文が6000余存在するが、なかには韻文形式のものも見られる[11]
  • アイルランド各地には十字架つきの独特のルーン石碑がみられる[30]
  • グリーンランドにはヴァイキング世界最西端の記念であるルーン碑文が残されている[30]
  • 黒海西岸のベレザニ島には恐らくもっとも東方で発見されたと思われるルーンの石碑がみられる[30]
  • 東京の日比谷公園の池のほとりには、日本で唯一のルーン石碑が立っている(これはヴァイキング時代のものではなく、SASの周航記念に彫られて贈られたものである)[30]

オーディンの箴言しんげん

  • アースヴィズ巨人たちの前でルーネを彫った[1]
  • 小人ダーインが、妖精の前でルーネを彫った[1]
  • 小人ドヴァリンが、小人の前でルーネを彫った[1]
  • 小人のスョーズレーリル(Þióðrørir[13])がデリングの扉の前でルーネのまじないを唱え、アース神に力を、妖精に利益を、オーディンに知恵を吹き込んだ[1]
  • オーディンは九夜のあいだ、風の吹きさらす樹に我が身を犠牲に捧げ(管理人注:ユグドラシルに九日間我が身を吊して)、ルーネ文字を読み取った[1]
  • オーディンが語ったルーンの効能一覧

    • 救い。争いや心配やすべての悩みから救ってくれる[1]
    • 医者になろうと思っている全ての人々の子に必要[1]
    • 敵の刃をなまくらにする[1]
    • 足かせや手かせを外す[1]
    • 投げられた槍を止める[1]
    • 呪いを相手に返す[1]
    • 火が燃え広がらないようにする[1]
    • 憎悪が募ったときに、鎮める[1]
    • 海上の風を鎮め、海を穏やかにする[1]
    • 魔女らが家に残してきた身体に戻れなくする(訳注:魔女は夜、姿を変えてよそに行くときに、住居に本体を残していく)[1]
    • 無事に戦から帰ってこられるようにする[1]
    • 死者と語る(訳注:ルーネを彫った木片を死者の舌の下に入れ、予言をさせる)[1]
    • 戦士が戦に出ても戦死することがないようになる[1]
    • 人々の前で神々のことを語るときにもちいる[1]
    • 小人のスョーズレーリルがデリングの扉の前で唱えたもの[1]
    • 女の心を変えて、自分を思うようにする[1]
    • 娘が自分を欺かないようにする[1]
    • オーディンと、オーディンを腕で抱いた者、オーディンの姉妹以外は知らないまじない[1]

グリーピルの予言

  • 麗しい王女が鎧をまとったまま山に寝ているのをシグルズが目覚めさせ、ルーネと医術を教わる[1]

シグルドリーヴァの歌

  • シグルドリーヴァシグルズに、力と名声や、呪文と医療のルーネと効き目の強い魔法と愛のルーネがたくさん入った麦酒を差し出し、様々なルーネの知恵や十一にもわたる忠告を授けた[1]
  • シグルドリーヴァがシグルズに教えたルーネ

    • Sigrúnar[13] 勝利のルーネ (sigr 勝利 [男])[3]
      ……勝利を望むときに使用する。剣の柄か血溝の上、あるいは剣の峰に勝利のルーネを彫り、二度チュールの名を唱える[1]
    • Ǫlrúnar[13] 麦酒のルーネ (ǫl ビール [中])[3]
      ……信じている女に欺かれたくないときに使う。角杯の上や手の甲に彫り、爪にᚾ(Nauð[13] ナウズ[1] )のルーネを印す。また、角杯を清め、災いに対し身を守り、飲み物の中に韮を投げ入れると、蜜酒に災いが混ぜられることは決してない[1] (nauðr 困窮 [女] 英語needに相当)[3]
    • Biargrúnar[13] 安産のルーネ(分娩のルーネ)
      ……妊婦の分娩を助けたいときに使う。手の平に彫って関節を伸ばし、ディースたちの加護を願う[1]
    • Brimrúnar[13] 浪のルーネ
      ……船の海路の安全を願う時に使う。舳先と舵の上に彫り、櫂に焼き込むと高浪はおさまり、波が黒くもならず、無事に港に着ける[1]
    • Limrúnar[13] 枝のルーネ (limar 枝)[3]
      ……医者になって傷を見ようとするなら必要。樹皮の上、または東に向かって枝を垂れる森の樹の上に彫る[1]
    • Málrúnar[13] 雄弁のルーネ (mál ことば、事柄、契約 [中])[3]
      ……誰からも恨みを憎しみで返されたくない時に使う。人々が法廷に行く民会で編み、織り、すべて組み立てる[1]
    • Hugrúnar[13] 知恵のルーネ
      ……誰よりも賢くなりたいときに使う。フロプト(オーディンの別名)が、ヘイズドラウプニルの頭とホッドロヴニルの角杯から滴った飲物から知恵のルーネを手に入れた。そしてミーミルの頭は彼にルーネでしるされた真の知恵を告げた[1]
    • bócrúnar[13] ぶなのルーネ[1]
    • meginrúnar[13] 力のルーネ[1] (megin 力 [中])[3]

    ルーネが彫られる箇所

グズルーンの歌Ⅰ

シグルズの短い歌

ニヴルング族の殺戮

グリーンランドのアトリの詩

  • アトリギューキ一族らを自らの国に招待しようと使者を送ったため、グズルーンが彼らを救うためにルーネを彫った。しかしそれは渡される前にヴィンギという者によって改竄された。それを受け取ったコストベラが内容を解釈した所、内容が混乱しているが、アトリのところに出かけたら死ぬという警告が書いてあるように読み取れたため、ヘグニにそのことを注意した[1]

リーグの歌

  • リーグ(ヘイムダル)が貴族の一族であるヤルルにルーネを教えた[1]
  • ヤルルの末子であるコンは、父ヤルルとルーネの技を競って勝利した[1]

詩語法

  • フルングニルのもつ三つのとがった角をもった心臓にちなみ、「フルングニルの心臓(Hrungnishjarta)[9]」というルーン文字がつくられた (hjarta 心臓)[3]

ギュルヴィたぶらかし

ユングリンガサガ

  • オーディンは自身が知るすべての技芸をルーン文字とgaldrar[22](魔法)という名の歌で人々に教えた[18] (galdr 魔法 [男])[3]
  • 三世紀初めから八世紀までの二十四文字の古形[1][30]。ゲルマン全域で共通に使われた[30]
  • 西暦200年ごろのルーン文字はアルファベットが24文字あり、石碑に彫られた[32]
  • Þ[3]: þurs[3][13](スルス[1]) 巨人[3] [男][3] 古代ノルウェー語のルーネ詩によると、女を病気にする力をもっている[1]
  • 八世紀以降に作られた十六文字の新形[1]
  • 800年頃には、いままでより文字が8つ少ないこの16文字のアルファベットが発達し、日常生活で使われた[32]
  • 九世紀から十一世紀に使われた[30]
  • 北欧だけで共通に使われたため、北欧共通フサルクとよばれる[30]
  1. [30][32] f[30]、F[32]
  2. [30][32] u[30]、U[32]
  3. [30][32] Þ[30]、TH[32]
  4. [30][32] ą[30]、A[32]
  5. [30][32] r[30]、R[32]
  6. [30][32] k[30]、K[32]
  7. [30][32] h[30]、H[32]
  8. [30][32] n[30]、N[32]
  9. [30][32] i[30]、I[32]
  10. [30][32] a[30]、A[32]
  11. [30][32] s[30]、S[32]
  12. [30][32] t[30]、T[32]
  13. [30][32] b[30]、B[32]
  14. [32]、ᛙ[30] m[30]、M[32]
  15. [30][32] l[30]、L[32]
  16. [30][32] R[30][32]
  • Luhþurar[4]: 火をもたらす者[4] Lóðurrの語源:オルリックの解釈[4]
  • Logaþore[4]: 狡猾な者[4] Lóðurrと関連する:E・A・フィリップソンの解釈[4]

参考文献