羅語Hadingus[24](ハディング[11])
原典版
概要
登場する文献と役割
デンマーク人の事績
- グラームとシグネの間に生まれた息子の名。兄弟にグトルムがいる。グラームがスウィブダゲルによって討たれた後はスウェーデンに送られ、巨人ワグンホフトとハフリによって養育と保護がされた。兄弟のグトルムがスウィブダゲルに貢納を誓ってデンマークの支配を任されたのに対し、あくまで父の仇を討つことを望み、軍事訓練に明け暮れた。そしてその心を和らげようとした乳母のハルトグレーパと褥を共にする。ある日彼女と共に自らの祖国に戻るための旅をし、夜の宿りを求めてある一軒の家に訪れた。そこで怪物に襲われるが、ハルトグレーパにより、命をもって助けられる。そして乳母を失ったことに同情した片目の老人の手引きによりヴァイキングのリセルと同盟を結ぶ。リセルと共にクールランドの暴君ロケルに戦いを挑むが敗走し、片目の老人によって看病と予言的忠告を受け、実際にその通りのことが全て正確におこる(管理人注:ロケルに捕らわれるが、片目の老人の助力により番兵は眠り、縛めを解き、そしておそらくロケルを打ち倒す)。その後ヘレスポントの王ハンドヴァンを攻撃するも、王は城市ドゥナで抵抗を試みたため、城市に巣を持つ鳥の羽に点火したローソクをくくりつけ、火事を起こしてこれを攻略し、ハンドヴァンを捕虜にするが、黄金を受け取り王を解放した。その後スウェーデンに戻ると、グトランディア付近でスウィブダゲルの大艦隊と遭遇し、これを打ち倒し、親と兄弟の復讐を遂げ、祖国の王権を取り戻した。その後、ワグンホフトの助力を得ながらスウィブダゲルの息子アースムンドと戦い、これに勝利する。アースムンドを倒した後はスウェーデン中を荒し回った。戦から帰国後、宝庫が荒らされていることに気づくと、宝庫の番人グレーメルを処刑し、盗んだ宝を返した者をグレーメルの就いていた名誉職につかせると公示して、名乗り出てきた者たちを全て死刑に処した。その後春になると再びスウェーデンに遠征を行うものの、五年間も戦い続けたため食料は尽き、軍は飢えに襲われた。そしてハディングはついに敗れ、ヘルシンギャに逃れた。そこで見たこともないような怪物を倒したところ、道で出会った一人の女がハディングに対して不吉な詩を歌った。それからハディングが航海すると嵐が巻き起こり、宿を求めるとその家が崩壊するなどの災難が続いた。そのためフレイ神に黒い犠牲獣を捧げたところ、災難が止まった。それからハディングはこの供犠の習慣を年毎の祭日として後世に残し、やがてスウェーデン人によりこの供犠は羅語Froblod[24](フレーブロート。訳注:フレイへの供犠)と呼ばれるようになった[11]
- あるときニテリの王ハクインが娘のレグニルダを巨人と婚約させたことを知ると、その縁組が王にふさわしくないものとしてノルウェーに向かい、相手の巨人を倒した。正体を知らぬままレグニルダは傷を負ったハディングの看病を行い、あとで誰か分からなくならないようにとハディングの足の傷の中に指輪を埋め込んだ。やがて父から夫を選ぶ自由を与えられたレグニルダによって、宴会に参加していたハディングが探し当てられ、ハディングはレグニルダを妻に迎え、祖国へ帰還した。ウッフォの出した布告によりビャルミアの人々と共にハディングを討とうとしたトゥニングを攻撃するため、艦隊を率いてノルウェーを通過した際、岸辺で一人の老人を見つけて同行させた。その老人に教えられたくさび型の陣形によりビャルミアの人々を圧倒したが、ビャルミアの人々は武器の代わりに驟雨を降らせる魔法を使ったため、それに対して老人は雲を制御する魔法で対抗し、ハディングは勝利した。別れ際に老人から、やがて敵の手ではなく自ら死を選ぶだろうとの予言を受けたハディングは、ウッフォに会談という口実でウプサラに招かれたものの、共として連れていたデンマーク人らを陰謀により失い、夜陰に乗じて逃げ出さざるを得なかった。その後の戦いによりウッフォを討ち、その弟フンディングに国を治めさせ、数年間は動乱もなく平和に過ごした[11]
- ユランのトストとサクソーニアのシフリードらによる同盟軍との地上戦に敗れたものの、退却中にトストらの艦隊を見つけ、船の胴腹に穴を開けてボートを奪い逃走した。それに気付いたトストらが追跡してきたため、ボートを転覆させてその下に隠れてそれをやり過ごし、ハディングらが死んだものと思い安心していたトストらを襲い、追い散らした。その後トストが再び自身の祖国に帰ってきたところ、決闘を挑んでこれを討ち倒した。その後、ハディングは死んだ妻の亡霊の夢で不吉な予言を受け、それは現実のものとなった。平民のグトルムに嫁いでいたハディングの娘ウルヴィルダが父を殺すようにと夫をそそのかし、宴会を準備させたのだ。ハディングはその宴会に出かけはしたが、夢で警告を受けていたため武装兵を配置しており、陰謀をはねのけることができた。しかしスウェーデン王フンディングはハディングが死んだと誤報を聞き、盛大な葬儀を行った際につまずいてビールの樽に落ちてしまい、窒息して死んでしまう。そのことを聞いたハディングは死んだ者より生きながらえることに耐えられず、民衆の前でみずから縊死し、そのあとは息子のフロートが国を継いだ[11]
― 訳注:この縊死は、オーディンに身を捧げる典型的な死の形式である[11]
参考文献